3. パラメーターリファレンス
3.4. FILTER
フィルターはミキサーでミックスされた信号にフィルター処理を行い、不必要な周波数をカットしたり、音に表現を加えたりします。
3.4.1. Filter Type/Slope
フィルターの種類とスロープ(傾き)を設定します。
(1) Type
フィルターの種類を設定します。
ローパスフィルター(LP)、ハイパスフィルター(HP)またはバイパス(OFF)のうち1つを設定します。OFFにするとミキサー出力はフィルターを通らず直接アンプリファイヤーに送られます。
(2) Slope
フィルターのスロープ(傾き)を設定します。
ローパスフィルター、ハイパスフィルターとも6/12/18/24[dB/Oct]の4種類のスロープが設定できます。
各フィルターは次に示すような性質を持ちます。
ローパスフィルター(LP)はカットオフ周波数より上の周波数を除去します。6/12/18/24の順で高音をカットする割合が鋭くなっていきます(左図)。
ハイパスフィルター(HP)はカットオフ周波数より下の周波数を除去します。6/12/18/24の順で低音をカットする割合が鋭くなっていきます(右図)。
なお機能の中には一部のフィルターにのみ使われているものがあります。Saturationの機能は12/18/24[dB/Oct]のローパスフィルターを指定したときのみ働きます。またResonanceの機能はSlopeを6dB/Octに設定した場合働きません。まとめると下表の通りになります。
Type | Slope | Saturation | Resonance |
---|---|---|---|
LP | 6 | × | × |
12 | ○ | ○ | |
18 | ○ | ○ | |
24 | ○ | ○ | |
HP | 6 | × | × |
12 | × | ○ | |
18 | × | ○ | |
24 | × | ○ |
3.4.2. Saturation
ローパスフィルターのサチュレーションの設定を行います。この設定は12/18/24[dB/Oct]のローパスフィルターを使用しているときに有効です。
(1) Saturation Type
サチュレーションタイプを設定します。HARD/MID/SOFTの3種類の中から1つ選択します。
(2) Saturation Level
サチュレーションレベルを設定します。
サチュレーションはローパスフィルターの設定パラメータで、フィルター内部で出力が一定以上に大きくならないよう出力を制限します。これはアナログ回路の特性をデジタル信号処理でシミュレートしたものです。用いる曲線の種類と出力制限レベルが設定するパラメータとなります。
サチュレーションタイプはサチュレーションに用いるリミット曲線の形を設定します。HARDは高性能のトランジスタ(またはオペアンプ)の特性、SOFTは昔の真空管の特性に近いものになります。MIDは両者のちょうど中間になります。
サチュレーションレベルは信号をリミットする最大レベルを設定します。
サチュレーションを効かせることにより出力に歪みが加わり、音色に変化を加えることができます。特にレゾナンスを強く効かせた音でレゾナンスによる発振を制御することができます。サチュレーションをHARDにするとフィルターは強く発振しますが、SOFTでは発振が抑えられます。またサチュレーションレベルは発振強度の上限を設定し、レベルを下げると発振強度も低下します。
3.4.3. Frequency
フィルターのカットオフ周波数を設定します。
3.4.4. Resonance
フィルターのレゾナンスを設定します。スロープが12/18/24[dB/Oct]の時に有効です。
レゾナンスはフィルターの設定パラメータで、フィルターを共振させて特性を変化させます。ローパスフィルターの特性を左図、ハイパスフィルターの特性を右図に示します(スロープが6dB/Octの場合は共振できないためレゾナンスは効きません)。
レゾナンスを上げると図のようにカットオフ周波数付近の特性が持ち上がり、音色に変化が加わります。レゾナンスを効かせた音色はMinimoogやTB-303など有名なアナログシンセサイザーでとてもポピュラーです。
レゾナンスを強く効かせるとフィルターが発振して出力が大きくなります。大きな発信音が発生してモニター機器を損傷させる可能性がありますので注意してください。特にモニタースピーカーの高音ユニット(ツイーター)は連続発信音には弱いものです。高価なモニタースピーカーを使用している方はくれぐれも気をつけてください。(もちろん自分の耳も傷めないように...)
なおExcitonは異常な出力が発生しないよう細心の注意を払っています。ローパスフィルターはサチュレーションで出力を制限し、またハイパスフィルターも出力が過大にならないようレゾナンス範囲を制限していますから、異常出力が発生する可能性はほとんどありません。それでも大きな連続発振音に対してスピーカーは弱いものだということを忘れないでください。
レゾナンスを用いるとオシレーターを使わなくてもフィルターを発振させて音を出すことができます。これは(本物の)アナログシンセサイザーでも時々用いられるテクニックで、Minimoogなどでフィルターを発振させながらカットオフ周波数を急激にスイープすることによって生じる効果音は有名でパーカッションの音としてよく用いられます。
このテクニックを用いるときはMIXERの設定で少しフィルターにノイズを入れてください。アナログシンセサイザの回路は元々少し雑音があるため何もしなくてもレゾナンスを上げるとフィルターは発振しますが、デジタル信号は雑音がほとんどないためわざと少しノイズを加えると発振するようになります。
3.4.5. Key Follow
MIDIノートオンメッセージに対するカットオフ周波数の変化率を設定します。
キーフォロー率は0〜200%の値が設定でき、100%(中央)でノートに対してカットオフ周波数が半音ずつ増加し、キーボードの音程と同じ割合になります。200%では全音、また50%では1/4音(クォータートーン)になります。また0%にするとどのMIDIノートに対しても同じ周波数になります。
3.4.6. Modulation Source/Destination A/B
フィルターに加えるモジュレーションの設定を行います。
Excitonはエンベロープが2系統(ENV1/2)、LFOが2系統(LFO1/2)、計4系統のモジュレーションソースを持っています。これを用いてフィルターのカットオフ周波数にモジュレーションを加え音色を変化させることができます。またスロープ12/18/24[dB/Oct]のフィルターの場合はレゾナンスにもモジュレーションを加えることができます。モジュレーションはA/B合わせて2系統を設定できます。
(1) Source
モジュレーションソースを指定します。ENV1/ENV2/LFO1/LFO2の中から1つを選択します。
(2) Destination
モジュレーションの行き先(デスティネーション)のON/OFF設定を行います。
FREQボタンをONにするとモジュレーションソースを用いてカットオフ周波数にモジュレーションを加えます。またRESOボタンをONにするとレゾナンスにモジュレーションがかかります(スロープ6[dB/Oct]の場合は何もしません)。両方同時にONにすることもできます。
3.4.7. Modulation Depth A/B
モジュレーションの大きさを設定します。
モジュレーションは+/−両方向に設定できます。例えばエンベロープをカットオフ周波数に加える場合、+方向に加えると周波数が上昇(フィルターを開く)、また−方向だと周波数を下げる(フィルターを閉じる)方向にモジュレーションが加わります。
オシレーターと同様に、ノブのスケールは0%付近は変化が小さく、また±100%付近では変化が大きくなっています。
フィルター発振を用いた効果音などでカットオフ周波数を大きく変化させたいときにモジュレーションを100%にしてもまだ足りない場合は、モジュレーションA/B両方を同じ設定にするとモジュレーションを2倍加えることができます。
3.4.8. Modulation Velocity Sens. A/B
モジュレーションのMIDIベロシティー変化率を設定します。
変化率を100%にするとノートオンベロシティーに応じてモジュレーションの大きさが0〜200%の範囲で変化します。変化率を0%にするとノートオンベロシティーによらず常に一定になります。
オシレーターと同様、フィルターのモジュレーションにベロシティー変化を加えることで、音に色々な強弱表現を加えることができます。例えばカットオフ周波数を変化させる場合、ベロシティーの強弱によってフィルターの開き具合を変えて音に表情を加えることができます。