4. オートメーションと外部コントロール

  1. Cubase VST上でのオートメーションと外部コントロール
    1. システムエクスクルーシブメッセージによるオートメーション
    2. コントロールチェンジメッセージによるオートメーションと外部コントロール
    3. 両者の比較
  2. Logic Audio上でのオートメーションと外部コントロール

MIDIメッセージを用いてパラメーターの動きを記録し、シーケンス上で再現することができます。またMIDIコントロールチェンジメッセージを用いて外部MIDI機器で主要なパラメーターを制御することができます。

パラメータオートメーション及び外部コントロールの方法は使用するホストアプリケーションによりかなり異なっています。これはMIDIメッセージ処理の細かい仕様がホストアプリケーションによって異なるためです。ExcitonではCubase VSTとLogic Audioの双方で最適な制御が行えるよう設計されています。

Cubase、Logic以外のホストアプリケーションについてはMIDIメッセージ処理の詳細仕様が不明なため残念ながら(今のところ)分かりません。ただしコントロールチェンジメッセージは大体のアプリケーションで使えると思いますので試してみてください。コントロールチェンジメッセージの詳細は「5 MIDIコントロールメッセージ一覧」のCubaseの欄を参考にしてください。

4.1. Cubase VST上でのオートメーションと外部コントロール

Cubase上ではシステムエクスクルーシブメッセージを用いてノブやボタンの動きをMIDIシーケンス上に記録することができます。またコントロールチェンジメッセージを用いてほぼ全てのパラメーターを制御することができます。

以下の解説はCubase VST 5.1上で使用した場合の説明です。

MIDIメッセージの使用用途はホストアプリケーション毎に異なるだけでなく、アプリケーションのバージョンによっても異なる場合があります。以下の説明はCubase VST 5.1上で動作確認した内容ですが、将来のバージョンでCubaseの仕様が変わる可能性がありますのでご了承ください。

4.1.1. システムエクスクルーシブメッセージによるオートメーション

Cubaseはシステムエクスクルーシブメッセージを用いてノブやスイッチの動きをMIDIシーケンス上に「記録」することができます。MIDIシーケンスを記録しながらノブやボタンを操作するとその動きが特殊なシステムエクスクルーシブメッセージとしてシーケンス上に記録されます。

これはCubase VST特有の機能で、他のホストアプリケーションでは使用できません。この方法を用いる場合はメニューのOptions - MIDI Setup - Filtering...を選択し、MIDI Filterダイアログボックスでシステムエクスクルーシブメッセージを有効にして下さい。(デフォルト設定ではシステムエクスクルーシブメッセージはフィルタリングされて記録できないようになっています)

4.1.2. コントロールチェンジメッセージによるオートメーションと外部コントロール

Cubase上でコントロールチェンジメッセージを用いてボイス数とMIDI受信チャンネルを除く全てのパラメーターを制御することができます。またこの方法でコントロールチェンジメッセージを送信する外部MIDI機器を用いてパラメーターを制御することもできます。

Excitonはコントロールチェンジメッセージによるパラメーター制御機能を持っており、ボイス数とMIDI受信チャンネルを除く全パラメーターが各コントロール番号に割り当てられています。コントロール番号と対応するパラメーターの対応は「5 MIDIコントロールメッセージ一覧」を参照してください。

この場合もMIDI Filterダイアログボックスを確認して、使用するコントロール番号のメッセージがフィルタリングされていないかあらかじめ確認しておくことをお勧めします。

ボイス数とMIDI受信チャンネルはコントロールチェンジメッセージでは変更できません。これらは誤動作で予期しないMIDIコントロールチェンジメッセージが受信された場合に異常な動作をしないようにするための予防策です。

コントロールチェンジメッセージを用いるとシステムエクスクルーシブメッセージではできない外部機器によるパラメーター制御を行うことができます。例えばブレスコントロールメッセージ(コントロール番号2)を出力する外部MIDI機器(ノブやフェーダー等)でフィルタのカットオフ周波数をコントロールすることができます。MIDIメッセージの受信先をExcitonに選択して外部MIDI機器(のノブやフェーダー等)を操作すると、Excitonのカットオフ周波数を制御できます。

外部MIDI機器が出力するメッセージのコントロール番号が固定されており、制御したい番号と異なる場合はCubaseのコントローラーマップ機能を用いることができます。メニューのOptions - MIDI Setup - System...を選択し、MIDI System SetupダイアログボックスのController Mapに外部MIDI機器が出力するコントロール番号と制御したいコントロール番号を設定することにより、コントロール番号がCubase内部で変換され外部機器で制御できるようになります。

パラメーターのうち使用頻度の高いものは(Logicへの対応のため)2ヶ所に割り当てられており、どちらのコントロール番号でも制御できます(例えばカットオフ周波数は2番と54番)。

4.1.3. 両者の比較

システムエクスクルーシブを用いた方法とコントロールチェンジを用いた方法はそれぞれ長所と短所があります。両者の特徴をまとめると下表の通りになります。

  システムエクスクルーシブ コントロールチェンジ
マウス操作(ノブ/ボタン)の記録 ×
外部機器による制御 ×
コントロールエディターによる編集 ×
リストエディターによる編集 [1]

[1]Cubaseのリストエディターを用いてシステムエクスクルーシブメッセージを表示・編集することは一応可能です。ただしノブ及びスイッチのマウス操作により出力されるシステムエクスクルーシブメッセージのフォーマットは特殊で、仕様は一般に公開されていません(内部で使用している浮動小数点データがそのまま記録されるようです)。そのため記録したシステムエクスクルーシブメッセージの編集はよほどの専門家(もしくはSteinberg社の技術者)でない限りお勧めできません。

総合するとコントロールメッセージを用いた方がやや便利かと思います。具体的には音作りの段階はマウスで操作し、出来上がったプログラムを保存した後、最後にコントロールエディターまたは外部MIDI機器でオートメーション情報を記録するのが賢い方法だと思います。

4.2. Logic Audio上でのオートメーションと外部コントロール

Logicをホストアプリケーションとして使用する場合はコントロールチェンジメッセージを用いて大部分のパラメーターを制御することができます。またこれを応用してコントロールチェンジメッセージを送信する外部MIDI機器を用いてパラメーターを制御することもできます。使用するメッセージ番号はCubaseの場合とはかなり異なります。詳細は5 MIDIコントロールメッセージ一覧を参照してください。

以下の解説はLogic Audio 4.8上で使用した場合の説明です。

MIDIメッセージの使用用途はホストアプリケーション毎に異なるだけでなく、アプリケーションのバージョンによっても異なる場合があります。以下の説明はLogic Audio 4.8上で動作確認した内容ですが、将来のバージョンでLogicの仕様が変わる可能性がありますのでご了承ください。

Logicはコントロールチェンジメッセージをオーディオチャンネルの制御に広く用いています。例えばコントロール番号3は(ソロON/OFF)、7〜10はそれぞれ(Volume, Balance, Mute, Pan)という風に割り当てられており、これらのコントロール番号のMIDIメッセージはプラグインには送られずにLogicでオーディオチャンネル制御用に使用されます。

また65番以上のコントロールチェンジメッセージはプラグインのコントロールに割り当てられます。オーディオインストゥルメントに(Exciton以外の)インサートエフェクトを用いない場合は65〜127全部がExcitonに割り当てられます。また別のインサートエフェクトを用いる場合は65〜79がExciton用に割り当てられ、80以上がインサートエフェクト用に割り当てられます。メッセージはコントロール番号別に分類されオーディオチャンネル上のインストゥルメントやエフェクトに分配されるためメッセージが混線することはありません。

64番(サスティーンペダル)はLogic上でプラグイン用メッセージ(Exciton#1)と表示されますが、オーディオインストゥルメントチャンネルでは通常のサスティーンペダルON/OFFメッセージとして処理されます(でないとサスティーンペダルが使用できずピアノ系の音色などで不都合が生じます)。

65番以上のコントロールチェンジメッセージはホストアプリケーションによってパラメーター変化すなわちノブやボタンの動きに変換されます。また逆にコントロールチェンジメッセージに割り当てられたパラメーターに対応するノブやボタンの動きはホストアプリケーションによってコントロールチェンジメッセージに変換されます。

以上をまとめると、インサートを用いない場合は大部分のパラメーターをコントロールできますが、インサートを用いる場合はごく一部のパラメーターしかコントロールできないことになります。そこで63番以下の空き領域に使用頻度の高いパラメーターを(重複して)割り当てています。

使用できるコントロール番号とパラメーターの対応は5 MIDIコントロールメッセージ一覧を参照してください。

0(バンクセレクト)、1(モジュレーション)も空き領域ですがパラメーターは割り当てていません。

Logic上では次に示すパラメーターをMIDIで制御することはできません。

このうちボリューム調整の機能はホスト側のチャンネルボリュームで代用できます(コントロール番号7)。

外部MIDI機器が出力するメッセージのコントロール番号が固定されている場合は、例えばEnvironment上でTransformerオブジェクトを使用することにより解決できます。Logic Audioは非常に強力なMIDIメッセージ処理機能を持ち、考えられるほぼあらゆる事が可能です。ここではとても説明し切れませんので、詳しくはLogicのマニュアルや解説書を参照してください。

1〜63の範囲の空き領域に割り当てられたパラメーターはLogicからはパラメーターと認識されていないため、ノブやボタンを操作してもMIDIメッセージは出力されません。

また120以上のコントロールチェンジメッセージは外部MIDI機器を用いたリアルタイムコントロールには使用できませんが、シーケンスを記録した後オートメーションとして用いることは可能です。

以上をまとめると下表の通りになります。

コントロール番号 マウス操作の記録 外部機器での操作 インサートとの併用
2, 4〜6, 11〜24 ×
65〜79
80〜119 ×
120〜127 × ×