兄くにおは、東京学芸大学で大学紛争を戦った経歴のあるインテリである。しかし期するところあって、芸能界へと志し、後を追ってきた弟とおると東京にてデビュー。
しかし、自らの芸風が東京の水に合わないとみるやいなや、すかさず大阪へと転進。日本舞踊等を採入れた泥臭い芸風が、大阪庶民に受け入れられ、一般の知るところとなった。
ところがこの頃襲った「漫才ブーム」は明らかに彼らにとって向かい風となった。
紳介竜介、ツービートらのニューウェーブ漫才の華やかさに比べ、彼らの芸風は余りにも
古くさく写った。若者に受け入れられなかったのだ。
彼ら自身も「しゃべくり漫才」へと転向するが、その頃には既に漫才ブームは過ぎ去っていた。彼らに当たる風は決してよくなかったのだ。
しかし、近年になってその「あきらめ」、「ぼやき」から出たしゃべくりネタが、爆発的に受け始めた。特に余興になると彼らの独壇場になる。下積み時代に築き上げた芸は、なおさら光って見え出した。いまや大阪の人間で彼らのこのギャグを知らない者はいないと言ってもいい。
(その1)
とおる「私ら実は兄弟なんですわ」
くにお「そういうことね、とおるちゃん!」
とおる「同じ親から出てきた訳です」
くにお「そうそう、そらそうだわ、とおるちゃん!」
とおる「こいつが先に出てきたから、兄貴です」
くにお「そうよ。兄貴よ、とおるちゃん!」
とおる「で、なかなか出んから私が蹴り出したんですわ」
くにお「なんちゅうこと言うの!とおるちゃん!」
とおる「ちょっと下品ね、くにおちゃん!」
くにお「オカマ漫才か!バカタレが!(ビンタ一発)」
(その2)
とおる「ほんま、悪いことしたらいけません。」
くにお「そうよ、そうよとおるちゃん」
とおる「悪いことしてもね、すぐに捕まるのがオチですから」
くにお「そりゃそうだわ」
とおる「手錠かけられて牢屋に拘引されるんです。」
くにお「あら、はずかしい、みっともない」
とおる「そりゃもう、あっと言う間ですよ、みなさん」
くにお「あら、そう?」
とおる「昔からいうでしょ」
くにお「何とね?」
とおる「拘引矢のごとし・・てね」
・・・・・・・・・・
とおる「あの、ここ、笑うとかんともう後、笑うとこ、ないですよ」