'The Deep'in Osaka-大阪芸能
Last Update 97.2.9
大阪芸能--「哀悼」中田ラケット師匠

ダイマルラケットの灯は消えず!

Illustration by まさし・きたお

諸氏ご存じのとおり、中田ラケット師匠がお亡くなりになられた。ラケット師匠はこの'The Deep' in Osaka旗揚げ時の大阪芸能にて紹介させていただいたという、大恩ある存在であったと同時に、我々ブレーンにとって、憧れの存在でもあった。WalterとJIJIは、ダイラケ漫才を目標に、ステージでのしゃべくりを練習したことすらある。
誠に寂しい限りである。そこで急遽'The Deep' in Osakaでは中田ダイマルラケット師匠を偲びWalterが特別起稿することで、亡きラケット師匠の冥福を祈ることにしたい。


「ダイマルラケットとダウンタウン」

ダイマルラケットを知らない者がいてもダウンタウンを知らない者はおそらくおるまい。今をときめく爆笑コンビである。天才的な発想の持ち主松本と、絶妙の間で鋭利なツッコミの浜田のコンビネーションは、今や国民的とも言える人気である。
一見、ダイマルラケットとダウンタウンは全く異質のように見える。無理もない。ダイラケ師匠は戦前より漫才をやっているのに対し、ダウンタウンは「戦争を知らない」世代である。両者の間には「漫才師」と言う共通点以外には、相いれないものがあると感じるのが普通である。
しかし、現代の華々しい舞台に立つダウンタウンにも、ダイマルラケットがなんと戦前から築き上げてきた、いわば漫才のノウハウが、脈々と受け継がれてきている。

現在のダウンタウンは、「漫才」をやっているのでなく、「トーク」をやっていると見るのが自然であろう。トークの中でも彼らの話術は秀でておる。このことはいちいちWalterの分析を待つまでもない。ここでWalterが注意するのは

ダウンタウンのトークの中に、ラケット師匠の築いたものが見える

ことや。
浜田のしゃべりより、彼のツッコミに見るべき所がある。彼は往々にして
松本のボケに突っ込むのを忘れたかのごとく、笑い出してしまう
ことがよくある。これこそラケット師匠の残した漫才遺産なのだ。

戦後テレビ時代の到来とともに、大阪の漫才師、ことにダイマルラケット師匠は、出来たばかりのテレビ局にひっぱりだこの状態であった。

「ワシらは10秒に1回、笑わすで!」

というのが師匠の自慢であった。しかしこの頃はまだ考え方に古き因習が存在した。

「ツッコミが舞台の上で笑うなどというのは好ましくない」

というのが一般の意見であった。しかしダイマル師匠は余りにも面白かった。ツッコミのラケット師匠も笑わずにはおれなかったのやった。

「天下のラケット師匠が、突っ込まずに笑っておる・・・」

これが契機になり、ツッコミが舞台の上で笑ってしまうことも違和感の無いものになっていったのである。ダイマルラケットがいなかったら、浜田という天才的な間合いを造れるツッコミは誕生しなかったと言っても決して過言ではない。

昨今よりの「ダウンタウンの番組はいじめにつながり、教育上好ましくない」との意見。これについてはWalterは言及しないが、彼らのこう言うスタイルも、ルーツはなんとダイマルラケット師匠にあることを強調したい。ダイラケ師匠が「ボクシング漫才」をやっていたことは有名な話であるが、いわゆる「ボクシングコント」と言うモノでなく、真剣なドツキあいやったと言う。信じられないかも知れないが、青竹でドツキ合いをやっていたこともあるという。
「真剣にドツキ合いをするから、客が喜ぶ」
それがねらうところであったのだ。
勿論それが、そっくりそのまま現在のダウンタウンに当てはまるとは思わない。しかし明らかにルーツを見ることが出来る事実は、時代が移り変わったと言えども、やはり注目に値するところではないかと考える。昔があるから今があるダイラケがあったからダウンタウンがある

今日もテレビではバラエティ番組がめじろ押しである。しかしこれらの番組に本当の面白さが存在しているのか。確かに面白く、視聴率を稼ぐ。が、ひっきょうそれだけの番組も存在する。なんのこだわりもないものもある。
Walterは忘れない。ダイラケ師匠のあの

「ネタに対する練り込みの深さ」
おもろい大阪人の立ち話を、いかに増幅して笑わせるか」
「しゃべくりずくめであるのに、全く違和感のない息と間」

その「芸」に対するあくなきこだわりは、大阪のWWW界では'The Deep' in Osakaが、全力で引き継いでいくことをここに誓い、つつしんで哀悼の意を表すものである。

ダイマルラケット師匠。
素晴らしい芸能遺産を残して下さり
本当に有り難うございました。
安らかにお眠りください。

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