PCミュージックの記事などで44.1kHz,16ビット,PCMという言葉をよく見るのですが,これにはどういう意味があるのですか?
「44.1kHz」というのはサンプリング(標本化)周波数,もしくはサンプリングレートといわれるものです。「16ビット」は,サンプリングサイズもしくはサンプリングの分解能や深さ,もしくは解像度といわれることもあるようです。これにモノラルかステレオのチャネル数を加えた三つが,「PC音楽」すなわちデジタルサウンドの構成要素になります。
ちなみに,44.1kHz,16ビット,ステレオ(2チャネル)は,音楽CDの規格と同一であり,このサンプリング周波数,解像度,チャネル数を「CDクオリティ」と呼ぶ人もいます。サンプリングレートと音質の目安は,電話程度の音質なら8kHz,DATには一部で48kHzでサンプリングするものもあるようです。
サンプリングレート,解像度,チャネルは録音/再生デバイスの処理容量や記憶容量,そして用途に応じて使い分けるのが一般的です。
音は空気を伝わる波動ですが,その波動をマイクロフォンなどで検出すると,動的に変化する圧力の遷移となります。その圧力の遷移を1秒に4万4100回ずつ調べて,1回の振動の大きさを16ビット,つまり16桁の0と1で表します。その組み合わせは216で,6万5536という画像の色数などで見慣れた数字になります。ですが,画像における色数と異なり,音声信号は正負の極性を持つため,正負に2分の1ずつ−32768〜+32767までの値で表現します。
人の耳は,20Hz〜20kHzの振動を音として聴くことができるといわれています。実際には,この範囲以上の音を「感じられる」ようなのですが,音楽CDが登場した
’80年代初めには20kHz以下は聴こえないというのが通説となっていました。人間の聴取可能な範囲の音をすべて再生するには,可聴上限の倍以上の周波数でサンプリングされたものが適しているとされていることにより,20kHzに対する44.1kHzが音楽CDの規格となったとのことです。
PCMは,Pulse Code Modulationの頭文字を取ったもので,アナログ信号をデジタル化する方式の名称です。一定時間ごとにアナログ信号を先に述べたサンプリング周波数とビット解像度に従ってデジタルデータに変換し,CD-ROMなどに記録できる形にします。ちなみにPCM自体はそれほど新しいものではなく,’70年代の技術です。
(岩井五郎)
サンプリングが粗いと原信号と違う波形になる