近ごろHDDのデータを完全に消去するソフトをよく見かけます。これらのソフトを使ってデータを消すのと,通常のフォーマットでデータを消すのとでは,何が違うのでしょうか?
最近,HDDの内容を消去するソフトが流行っている原因として,企業のリース切れによるマシンの交換需要が多くなっていることが挙げられます。企業へ貸し出すマシンのリース期間は, たいてい5年前後となっているので,Windows 95の発売当時に導入されたマシンは,ちょうどリース期間が終了する時期なのです。そのため,PCが社内から離れるときに,内部データが外部に漏れないように完全に消去する必要があるからです。
HDDやフロッピーといった記憶装置は,実データが格納されている部分とファイルの情報を格納している部分に分かれています。ファイルの情報を格納している部分をファイルアロケーションテーブル(FAT)と呼んでいます。データの消去のさいに行われる一般的なフォーマット作業は,データの部分はそのままにFAT部分を書き換える論理フォーマットが行われています。つまりFAT部分を書き換え,実データ部分を読み込めないようにするのです。データが完全に消えるわけではないので,復活ツールでデータを読み出せてしまいます。
企業で使われていたデータを外部から完全に読まれないようにするには,データ部分をすべて消去する物理フォーマットを行う必要があります。しかし,物理フォーマットを行ってもディスク上の残留磁気により,なんらかの方法でデータを読み取られてしまう可能性がないとはいいきれないのも事実です。ちなみに,軍事施設のように機密の保持をとくに求められるようなところでは,HDDの内容を完全消去するために,まったく関係のないランダムなデータを何度も記録して,残留磁気で読み取ることすら不可能にしてからデータを消去するという,非常に厳重な方法でデータの消去を行っています。
ここまでする必要はないかもしれませんが,ディスク内のデータを完全に消去するユーティリティを使えば,実データ部分も含めて消去できます。例えば,富士通アルファオメガソフトの「ターミネータ パーフェクト」(画面3)は,DOSで起動するディスク消去ツールで,消去時に六つのセキュリティレベルを選択できます。前述の軍事施設で使われているような消去方法もサポートしていて,データの痕跡を残すことなく消去できます。
(赤坂賢太郎)
画面3 HDDデータ完全消去ソフトの「ターミネータ パーフェクト」。Vector(http://www.vector.co.jp/)からオンラインで購入できる。販売元:富士通アルファオメガソフト,価格:8400円