CD-Rの追記について

以前データを書き込んでおいたCD-Rに追記したところ,前に書いた分にアクセスできなくなってしまいました。どうしてもそのデータが必要なのですが,何か方法はないでしょうか。


CD-Rは99回までの追記(後から書き足すこと)が可能ですが,そのさいに以前のセッションへのアクセス方法をどうするかは次のいずれかをユーザーが任意に設定できるようになっています。

@すでにあるセッションとは独立した,まったく新しいセッション
Aすでにあるセッションに連結したセッション(リンクドマルチセッション)

 通常,@の方法で書き込むと一般的なCD-ROMドライバ(Windows 98/95に含まれるMSCDEX.EXEやCDFSなど)では最終セッションだけが有効になりますので,それまでのセッションに書かれたデータは(論理的に)見えなくなります(図1)。
 Aの方法を使うと,以前書いた分を含めて単一のドライブレターで扱え,同時にどちらへもアクセスできます。
 ご質問からすると@の方法を選んでしまったものと思われますが,この場合にはEasy CD Creator(アダプテック)などに含まれている「セッションセレクター」を使うことで,以前のセッションを明示的に呼び出せるようになります(画面1)。
 ところで,Aの方法が万能かというと,そういうことでもなくて,独立セッションで記録する方法にも,もちろんメリットはあります。
 例えばCD-Rをデータのバックアップ先として捉えた場合,@の方法を使うと同じ名前のファイル(ディレクトリ構造も含めて)を各セッションに完全に独立したものとして書き込むことが可能です。つまり,ファイルの改変履歴をそのまま残すこともできるわけです。
 Aの方法,リンクドマルチセッションで作成すると,同じ名称のファイルがあった場合,最新のセッションに書かれたほうだけが有効になり,それ以前のセッションに書かれているほうの古いファイルは参照できなくなります。
 もちろん,CD-R上のデータは物理的には削除できませんので@,Aのいずれの場合もファイルの実体そのものは残っていますが,セクタ単位で呼び出すなどの裏技を使わない限り,通常はアクセスできません。
 また,これを応用すると,人に見られたくないファイルに簡単なプロテクトをかけることも可能です。前述のとおり,一般的なOSでは最新セッションしか参照されません。重要なデータを記録した後で,そのセッション(セッションAとします)と連結せずに追加セッション(セッションB)を生成してしまえば,CD-Rのセッション情報などを参照しない限りセッションAのデータは存在していないように見せかけられます。もちろん,セッションセレクタやCD-Rのライティングソフトが持つメディア情報参照機能を使われてしまうと極秘文書が明るみに出てしまいますので完璧とはいきませんが,暗号化などと組み合わせることで対応するとよいでしょう。
 ただし,追記を行うと1回当たり7MBほどのむだが発生します。冒頭で触れたように,仕様上は99回の追記が可能(これは音楽CDの最大トラック数と等価です)となっていますが,実際にはこれよりも大幅に少ない回数が上限となります。
 なお,セッションリンクの設定は追記のたびに指定するため,5セッションあるうちの1と2がリンク(Cとします),3から5をリンク(Dとします),CとDはそれぞれ独立,といったような連結方法も可能です。
(菊地 潤)

図1 リンクドマルチセッションと独立セッションのイメージ





画面1 Easy CD Creatorのセッションセレクタで選択できる