POP3に代わるといわれているIMAP4ですが,対応したメールソフトでは具体的にどんなメリットがあるのですか?
IMAP4はPOP3と同じように,メールサーバーのメールボックスにリモートでアクセスして,クライアントがメールを操作するためのプロトコルです。しかし,POP3に代わる新しいプロトコルというわけではなく,どちらかといえば,やや目的が違うプロトコルと考えたほうがよさそうです。
IMAP4について解説する前に,普及しているPOP3の欠点をおさらいしておきましょう。POP3は,クライアントがサーバーにアクセスしてメールを受信するためだけに作られたプロトコルです。POP3には,大ざっぱに次の三つの機能しかありません。
@新着メールを受信する
A受信したメールを削除する
Bメールボックスにあるメールの数とサイズを知る
例えば,メールボックスに巨大な添付ファイルが付いたメールが入っていたとしましょう。POP3クライアントはメールのサイズしか知ることができないので,このメールをダウンロードするか,しないかという選択肢しかありません。添付ファイルを除く本文だけをダウンロードというような詳細な指定ができないためです。
また,読者も経験していると思いますが,ノートPCとデスクトップPCの2台でメールを受信していると,メールが2台に分散してしまい面倒です。
IMAP4の最大の特徴は,POP3の欠点を克服するために「サーバー内でメールを一括管理する」ことでしょう。受信したメールはサーバー上のホームディレクトリ(の指定したディレクトリ下)に蓄積されます。そのため,複数のクライアントからアクセスしても,常に同じメールボックスを読むことができます。モバイル環境+デスクトップPCという構成で利用している人にとっては非常に便利な仕組みなのです。
その代わりに,メールサーバー上にメールを蓄積するために十分なストレージ容量が必要です。LAN上のサーバーなら容量に余裕を持たせておくことが可能でしょう。しかし,多数のサービスを展開しているプロバイダのサーバーでユーザー分の容量を確保するのは困難です。IMAP4がPOP3に代わるプロトコルではない,という理由はここにあります。
そのほか,IMAP4では指定した一つのメールをデータ項目のリストとして扱い,メールに含まれるデータ項目だけを抜き出してクライアントに送信する機能を持っています。例えば本文だけダウンロードするとか,添付ファイルだけダウンロードする,というような高度な指定が可能で,メールの一括ダウンロードしかできないPOP3に比べ回線の負荷を軽減できます。IMAP4サーバーではメールが一種のデータベースソースとして扱われていて,メール本文内の検索などもサーバー側が行うので,クライアントの負荷も軽くなるといわれています。
もっとも,その代わりにIMAP4サーバーはPOP3に比べると重く,サーバー側に負荷がかかります。サーバー機が遅いマシンでは検索/ダウンロードともに重くなるわけです。また,理屈のうえではメールクライアントが軽くなるといっても,ソフトの出来不出来に左右されるので何ともいえません。
IMAP4は認証方式として,ケルベロス認証(ケルベロスV4),GSSAPI,CHAP(Challenge-Response)など高度な認証をしていて,この点でも単純なテキスト認証しかないPOP3に比べ勝っています。
とはいえ,いずれにしてもIMAP4はLAN向きのプロトコルであり,採用するプロバイダはごくわずかでしょう。プロバイダではユーザー認証の暗号化が可能なAPOP(厳密にはAPOPというプロトコルがあるわけではなく,MD5暗号化認証をサポートするAPOPコマンドをサポートしたPOP3サーバーという意味です)が主流になっていくと思われます。
(米田 聡)
画面 IMAP4対応のメールクライアントEudora Pro 4.1JをIMAP4クライアントで使っている様子。
左側のメールボックスはサーバー上にあるメールボックス。
IMAP4にすると,オプションで本文を読むとき以外はメールタイトルだけをダウンロードするよう設定できる
■主なIMAP4対応メールソフト
Netscape Communicator(日本語版)
Windows 95/98/NT
ネットスケープ・コミュニケーションズ
Outlook Express
Windows 95/98/NT
マイクロソフト
Eudora Pro 4.1J
Windows 95/98/NT
クニリサーチインターナショナル
WeMail32
Windows 95/98/NT
日本電気テレコムシステム
Winbiff
Windows 95/98/NT
オレンジソフト
Winbiff CE
Windows CE 1.01日本語版/2.0日本語版
オレンジソフト