CD-RのRAWモードって何ですか?
RAWというのは,英語で「生の」とか「手を加えていない」という意味です。ですからRAWデータやRAWモードという言葉は,CD-R以外にもCCDやらプリンタ出力形式やらで頻繁に使われる用語です。ご質問のCD-RにおけるRAWモードですが,一般的にはエラー補正などを一切しない読み書きを行うモードを指します。
一般的なCD-ROMのデジタルデータは,イエローブックが規定しているMode1形式で保存されています。このモードでは,1セクタが2352バイトとなっており,そのうちの2048バイトがデータ領域となっています。残りの304バイトはエラー訂正用のチェックサムコードが記録されており,読み取りエラー発生時には,チェックサムコードとの比較によって訂正されるようになっています。一方,標準的な音楽用CDでは,1セクタは同じ2352バイトですが,すべてデータ領域として利用されています。セクタ単位のチェックサムコードなどは収められていません。つまり,音楽CDを読み出したときには,セクタ単位のエラー補正は働かないのです。
CD-ROMにおけるRAWモードというのは,データトラックをオーディオトラックと同じように読み取る,つまり2352バイトのセクタデータをそのまますべて読み取る方式です。つまり,デジタルデータであっても,エラー補正が働かないモードなのです。CD-ROMの中には,故意にチェックサムデータに正しくない値を記録しているものがあり,通常のバックアップを行うと,データ補正がかかり,元とは違うCDができ上がるようになっています。これを利用して,正常に起動できないようにしてコピープロテクトをかけるのが一般的です。
ただ,RAWモードではこの補正が働きませんから,コピー時には正しくないチェックサムまでそのままコピーされるため,このプロテクトは効かないことになります。こう書くとかなりやばそうな機能であることが分かりますね。バックアップをとる場合などは,著作権に十分留意しておかないと,知らぬまに犯罪を犯すことにもなりかねませんので,ご注意ください。正当な活用法としては,傷が付いてしまってコピー時にエラーとなるようなCDでも,RAWモードを利用することで,なんとかコピーできることがあります。
なお,RAWモードを利用してバックアップするためには,RAWモード書き込み(RAW-DAO:RAWモードでのDisc At Onceの書き込み方式)に対応したCD-Rドライブと,RAW-DAOに対応したライティングソフトの組み合わせが必須となります。また,既存のドライブのファームウェアのバージョンアップで対応できる場合もあります。例えば,ヤマハのCRW2100ではファームウェア Ver.1.0hからRAW-DAOに対応しています。しかしドライブのファームウェアを上げても,ライティングがドライブを可能機種として認識しない場合もあり,その場合はソフト側のバージョンアップを待つことになります。
なお,RAWモードに対応したライティングソフトには,CloneCDやDiskJagg
lerなどのデュプリケート(複製)専用ソフトのほか,CD革命VirtualといったCD仮想化ソフトでも対応しているものがあります。
(寺崎基生)
ファームウェア1.0hからRAW-DAOモードに対応しているヤマハの16倍速書き込みのCD-RWドライブ「CRW2100」。ちなみにCloneCDでこのドライブはVersion 2.8.4.2から対応している