CPUを効率よく冷やすには?

ケースの側板を外したまま使っていると,冷却性能が落ちるので,熱暴走しやすくなるというのは本当でしょうか?


通常のタワーケースは,側板を装着した状態で利用することを前提に設計されています(安価なケースでは,側板と天板がコの字型の金属板1枚でできており,側板のみを取り外せない製品もあります)。しかし,頻繁にパーツ構成を変えるテスト用マシンやオーバークロックの限界を探っている場合など,いちいち側板を付けたり外したりするのが面倒なので,側板を外したまま使うことがあります(最近のマザーボードでは,BIOSセットアップ画面でFSBクロックなどを変更できるものが増えており,その場合は,設定変更のために側板を外す必要はありません)。
 側板の有無が,マシンの冷却にどう影響を及ぼすかについては,二つの相反する考え方があります。一つは,側板を外したほうが,外部の冷たい空気を取り入れやすくなるので冷却にはプラスに働くという考えです。もう一つは,側板を付けたほうが,背面の排気ファンが有効に働きケース内部の空気の流れが十分確保されるので,冷却効率が上がるというものです。どちらも一理あるように思えますが,ケースの大きさや内蔵HDDの数,室温などによって,条件は変わりますので,どちらの意見が正しいか一概にはいえません。
 そこで試しに,ケースに入れずにマザーボードをむき出しのままで動かした状態とケース側板を外した状態,ケース側板を装着した状態のそれぞれについて,CPU温度を計測してみました。CPUに負荷をかけるため,円周率計算プログラムのスーパーπ(東京大学金田研究所作)を実行させ,マザーボード付属のハードウェアモニター「PC Alart III」を用いて,平衡に達したときの温度を計測しました。なお,発熱を意図的に増やすために,FSBクロックを124MHzに上げ(930MHz動作),CPUコア電圧も定格の1.65Vから0.15V上げて(1.8V),テストを行っています。計測時の室温はほぼ20℃です。
 結果は表にまとめたとおりです。今回のテストでは,ケースの側板はあってもなくても,CPUの冷却にはほとんど影響がないという結果になりました。また,室温がそれほど高くなければ,ケースに入れるよりも,マザーボードをむき出しのまま利用したほうが,CPUの温度は低くなるようです(その差は1〜2℃程度ですが)。もちろん,側板を外すと騒音も大きくなりますし,ホコリも内部にたまりやすくなりますので,側板を外した状態で長時間使うことはあまりお勧めできません。今回使ったMT-PRO2200は,ミドルタワーケースの中では最大級の拡張性と内部空間の広さを誇るケースですので,狭いミニタワーケースなどでは,結果が変わる可能性もあります。また,CPUクーラーのファンの風向きについても,ケース内部がフラットケーブルやパーツでごちゃごちゃしている場合,上から吹き付けるタイプよりも,横向きに吹き抜けるタイプのほうが有利だといわれることがありますが,実際にはたいした違いはないようです。
(石井英男)

※テスト環境
CPU:Pentium III/750MHz(124MHz×7.5=930MHzで駆動)
マザーボード:MSI 694 Master(Apollo Pro133Aチップセット)
メモリ:SDRAM 128MB(PC133,CL=3)
HDD:IBM DTLA-307020
ビデオカード:カノープス SPECTRA F11
OS:Windows 98 SE
ケース:星野金属工業 MT-PRO2200

表 CPU温度計測結果
ケースなし
ケースの色側板を外した状態
ケースの側板を装着した状態
インテル純正CPUクーラー
42℃
45℃
45℃
風神2000
35℃
37℃
38℃
GALILEO
47℃
48℃
49℃



今回のテストに使用した,星野金属工業の「MT-PRO2200S」(価格:6万円“300W電源搭載モデル”,問い合わせ先:ソルダム TEL:0276-30-3773)



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