LANカードに,BOOT ROM用のソケットが付いていますが,これを付けると何ができるのでしょうか。また,Wake On LANとの違いを教えてください。
一部のLANカード(以下NIC)にはBOOT ROM,もしくはBOOT ROM用ソケットを備える製品が存在します。SCSIカードではBOOT ROM(SCSI BIOS)を持った製品が多いのですが,BOOT ROMがある製品は接続したデバイスからOSを起動することができ,BOOT ROMを持たない製品ではできません。つまり,SCSIで接続したHDDやCD-ROMドライブからOSを起動するように,NICでもBOOT ROMがあればネットワークを経由してOSを起動することが可能です。PCでは標準的なストレージであるFDD,IDE接続のHDD,CD-ROMドライブからBOOT LOADERを読み込んで起動を試みるほか,特定のアドレスにマップされたBIOSを実行することもできるので,ストレージ以外からOSを起動することは不可能ではないのです。
NICでのブートはOSを選ぶ
NICとSCSIで大きく異なるのは,NICでは特定のOSしか起動できないことです。基本的には一部のPC UNIXのみと思ってよいでしょう。またネットワークからOSを起動する必要があったのはHDDが高価な時代の話であり,この理由からディスクレスワークステーションが存在したころのことです。現在ではほとんど使用されず,NICのほうもBOOT ROM用のソケットのみを持つ,もしくはソケットすら持たない製品が主流になっています。
Wake On LANとの違い
Wake On LANはNICのBOOT ROMとはまったく異なる機能です。Wake On LANに対応したマザーボードとNICを使用すると,NICがイーサーネットのパケットを受信することによってPCを起動させることができます。こちらはネットワークからOSを起動するのではなく,PCの電源を入れることができる機能です。同様のものにWake On Modemという機能があり,これはモデムの着信をマザーボードが感知してPCを起動させることが可能になります。以前は対応した内蔵モデムなどでしか使用できませんでしたが,最近はIRQを特定することで,指定したシリアルポートに接続されたモデムへの着信でもWake On Modemの機能が利用できるようになっています。これらはATX規格の登場でPCの電源がソフト的に制御可能になったため実現した機能といえます。
(坪山博貴)
写真1 BOOT ROMソケットのあるISAのネットワークカード
写真2 Wake On LANのソケット。Wake On LAN対応のNICとここをつなげる
(写真はSOLTEK SL-67G64)