IDEをSCSIに変更するテクノロジー

Ultra SDAT方式とは何ですか?


Ultra SDAT(Ultra SCSI Directed ATA Transfer)方式とは,ATA(IDE)をSCSIに変換する技術のことで,メルコによって開発されたものです(特許出願中)。例えば,IDE HDDをUltra SDAT方式でSCSIに変換することによって,SCSI HDDとして機能するようになります。IDE-SCSI変換技術は,日本テクサから発売されている安価なRAIDシステム「RAID Station」などですでに製品化されていましたが,個人ユーザー市場で実用化されたのは初めての試みといえるでしょう。
 IDE HDDをSCSI HDDとして利用できると,IDEとSCSIそれぞれの良さを組み合わせられる利点があります。SCSIがIDEより優れている点は,まず信頼性が高いことです。SCSIバスは,伝送時のデータ化けを検出するパリティライン(余談ですが,ATA-3規格ではパリティを持つことが可能となりました),そして伝送経路における信号の劣化や反射を防ぐターミネータ(終端抵抗)が用意されています。データを高速にそして安定に転送するならば,IDEよりもSCSIのほうが有利であるといえます。また,コマンドがマルチスレッドで処理可能なSCSIは,Windows NTやUNIXといったマルチタスク環境下で威力を発揮します。とくに複数のデバイス(HDDやCD-ROMドライブなど)を接続したヘビーな環境では,効率の良いコマンド処理が可能なSCSIのほうが圧倒的に有利となるのです。
 一方で,IDEの利点はなんといっても安価なデバイスが多いことでしょう。同容量,同スペックのHDDを比較した場合,IDE HDDの価格はSCSI HDDの3分の2から場合によっては半額程度のこともあります。また市場原理により,ニーズの高いIDE HDDはSCSI HDDよりも最新技術の投入が早いため,SCSI同クラスの性能比較では,IDE HDDのほうが高速になることがあります(ただしこれは普及価格帯の機種を指しており,最上位機種の場合には当てはまりません)。
 以上のようにUltra SDAT方式を利用することによって,IDEのように安価でありながら,性能や信頼性はSCSI並みといった欲張りな製品を実現できるのです。メルコではさっそくUltra SDAT方式を利用した製品として,外付けUltra SCSI HDD「DSC-UEシリーズ」を発売しています。
(伊勢雅英)