CMOSとBIOSはどう違うのでしょうか。また,BIOSが記録してあるフラッシュメモリはCMOSとは違うものなのですか。
「CMOSセットアップ」と「BIOSセットアップ」は同義語のように用いられますが,CMOSとBIOSの概念はまったく異なります。CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)メモリはLSIの一種であるMOS型メモリの代表格で,ごく少量の電力でデータを保持できる特徴を持っています。フラッシュメモリについては後で触れますが,こちらは書き換え可能なROMであり,電源を切っても内容が消えないのが特徴です。どちらも,ハードウェアとしてメモリを分類する言葉といえます。
これらに対してBIOSはソフトウェアの名称です。BIOSは,「Basic Input/Output Subsystem」の略で,電源投入時に実行されるスタートアッププログラムや,基本デバイス(画面やHDD,フロッピー,キーボードなど)に対する入出力を管理する小さなプログラム群であり,マザーボード上のROMやフラッシュメモリに格納されています(画面下)。そして,BIOSは,電源投入時にPCの各部をセットアップするための情報を保持しておくために,バッテリーで記憶内容がバックアップされているCMOSメモリを用います。このことが両者の概念を混同させる原因となっているようですが,BIOS本体がCMOSに格納されているわけではありません。また,CMOSメモリの中には,ユーザーがBIOSセットアップで設定した内容や,時計のデータも保持されています。
BIOSセットアップの内容の保持にCMOSが使用される理由は,
・消費電力が小さく,小型バッテリーで長期のデータ保存が可能
・ノイズなどに対する耐性が高く,データの信頼性が高い
・フラッシュメモリやEEPROMのような使用期限がなく,永久に使える(もちろんバッテリーが切れたら使えませんが)
といったところでしょう。
フラッシュメモリはCMOSとは別の素子です。フラッシュメモリは電源をオフにしても内容が消えず,しかも随時読み書きが可能です。これがBIOS本体の格納に適しているのは,データ消失の危険性が低く,必要に応じて内容をアップデートできるからです。
それではなぜ全部フラッシュメモリにしないかというと,フラッシュメモリの素子自体が出てきたのが最近だということと,フラッシュメモリは頻繁な読み書きに堪えない(アクセス速度が遅く,書き換え可能回数もCMOSなどに比べ数桁少ない)という欠点があるからです。
(米田 聡・大原雄介)
マザーボード上のROMやフラッシュメモリに格納されたBIOSは基本デバイスの入出力を管理する。画面はAward BIOS(上)とAMI WIN BIOS(下)