CD-RはSCSI同士でなければ読み書きできないのですか。
まず結論からいうと,最近はATAPI接続タイプのCD-Rドライブも製品化されていますので,必ずしもSCSI接続でなければならない,ということはありません。
これまでIDEの仕様には曖昧な部分が多く,リムーバブルメディアの取り扱いは難しかったのですが,ATAPIが提唱され標準仕様ができてからは,徐々にZipやMOなどもATAPI接続の製品が登場し始めています。CD-Rもその中の一つです。CPUパワーさえあれば,高価なSCSIカードを用意しなくても,PCが標準装備しているIDEでCD-Rが作成できるようになっています。
メディアについても,一度データを書き込んだものはドライブからは通常のCDと同じように認識されますので,CD-Rで作成されたディスクはPC用のデータならCD-ROMドライブ,CD-DAなら音楽用のCDプレイヤーでも再生できます。書き込みにはもちろんCD-Rドライブが必要ですが,再生はとくにCD-Rドライブでなくても大丈夫です。一般的なPCに搭載されているATAPI CD-ROMドライブでも平気ですから,SCSIドライブである必要はありません。
ですが,ATAPIのCD-Rドライブを使う場合にはいくつか気をつけなければならないことがあります。
専用チップでデータ転送やキューを処理するSCSIと比べると,IDEの転送速度は多分にCPUパワーに左右されます。最近のPCであればまず不足はないと思いますが,CPUパワーが高いほど安定した書き込みが行えます。HDDなどもなるべく高速なモノを用意したいところです。
Windows 95で使う場合,最低限Pentium/166MHzくらいの処理速度を持つCPUと,5MB/秒程度の転送速度の出るHDDが必要です。
あまり古いIDEコントローラでは,期待した動作をしないことも多々あります。ものによってはバスマスタドライバなども原因不明のエラーの元凶となるようです。
SCSIにはディスコネクト信号が定義されているため,各機器は一定の時間でバスを解放し,次の機器に制御が移るようになっているのですが,ATAPIではこの信号が規定されておらず,24倍速,32倍速といった高速CD-ROMドライブなどには一度バスをつかむとなかなか解放しないものが多々見られます。こうなるとCD-Rドライブへのデータ転送が実書き込みに間に合わない状態,いわゆるバッファアンダーランエラーが発生してしまいます(図1,図2)。
これを回避するためには,同一バス上に別の機器を接続しないようにするしかありません。多くのPCはプライマリ,セカンダリの2系統に各2台ずつ,計4台までの機器が接続できますので,HDDとCD-ROMドライブはプライマリに,CD-Rドライブはセカンダリに接続するとよいでしょう(図3。ただし,こうすると今度は同じ理由でHDDがCD-ROMドライブに足を引っ張られるようになります)。
ポイントとしては,
・ATAPI CD-Rドライブは単独で接続し,データ元となるHDD,CD-ROMドライブとはバスを分ける
・TRITONタ以降のIDEコントローラ(PIIX3,PIIX4など)を使い(写真1),バスマスタドライバは組み込まない
といったところでしょうか。
ただ,現在のCD-RドライブではATAPIタイプはまだ数えるほどで,SCSI接続のほうが製品数が多く,動作も安定しています。
最近増えてきた大手メーカー製のATAPI CD-Rドライブ搭載PCでは,CPUパワーやHDDの速度も含めてバランスをとったうえで出荷されているため,問題になることはまずありませんが,ドライブ単体で売られているものの場合,相性そのほかのリスクはユーザー自身が負うことになります(写真2)。SCSIカードはほかにも使い道がありますし,個人的にはやはりSCSIドライブをお勧めします。
図1 CD-Rは内側からデータを書き込んでいく。例えばA地点からB地点まで一周する間にデータバッファが空になってはいけない。バッファが空になるとバッファアンダーランエラーになってしまう
図2上 コントロール信号が多く,しかも速いので確実にデータがやり取りされる
図2下 コントロール信号が少なく,しかも遅いのでデータが「行ったきり」になりやすい
図3 IDEのCD-Rドライブは別系統でつなぐほうがよい
写真1 インテルPIIX4。430TXや440LXのIDEコントローラ。ATAPI CD-Rドライブを使う場合には,なるべく新しいコントローラを使いたい。互換チップセットでもApolloVP3,AladdinIVなどであればOKだ
写真2 ATAPI CD-Rドライブの代表的な製品(リコーCD-RW MP6200A)。CD-RWにも対応し,2倍速書き込みと6倍速読み出しが可能