PalmOS 4.0になると,Palmはどう変わりますか?
現在,PalmOS搭載機は米国のPDA市場で75%という圧倒的なシェアを占めています。ヨーロッパでは約50%(Windows CEが47%),日本では正式なシェアが公表されていませんが,ザウルスに次ぐ2位で10〜30%程度といわれています(この数値には携帯電話のシェアは含まれません)。つまり,ヨーロッパ市場ではWindows CEにシェアで追いつかれつつあり,日本ではザウルスの市場を崩すことができていない状態にあります。さらにはiモードがJavaアプリケーションを搭載できるようになり,PDAが独占していたビジネス端末の市場に着実に近寄ってきています。それに対抗するべくPalmOSのPDA市場におけるシェアを伸ばすために投入されるのが,PalmOS 4.0および新型のPalmマシンなのです。
昨年末に米パームコンピューティングのCEOのCarl Yankoski氏がPalmSource2000の基調講演で発表したロードマップは以下のとおりです。
まず,現状(PalmOS 3.5)では一部の機種だけにサポートされていた通信機能やメモリースティックなどの記録メディアへのアクセス,電話機能などをOSに標準化するという流れを示しました。現在はパームコンピューティング以外のベンダーが販売しているPalmOS搭載マシンが持っているような機能やインタフェースをOSに取り込むということです。
PalmOS 4.0で正式にサポートすることが公表されているのは以下の点です。
・16ビットカラー表示
・外部メモリ
・Webクリッピング機能
・Bluetooth対応
・電子メールやショートメッセージ(SMS)の着信
・セキュリティ機能
端的にいえば,現在のWindows CE 3.0が持っている機能がPalmOS 4.0でも実現されるということがメインです。ただ,独自の「シンプルさ」をウリにしているPalmOSなので,Windows CEのような「機能のてんこ盛り」ではなく,シンプルで使いやすさを重視したものになることは確かでしょう。
スケジュール的には,PalmOS 4.0を搭載した機器は米国で2001年の4月以降に出荷が開始される予定です。これはiモードの米国上陸,次期Windows CE登場のスケジュールと重ねてきているようです。ハードウェアとして特定のCPUでしか動作しなかった機種依存をやめる方向で開発が進み,PalmOS 5.0でARMプロセッサに対応します。また携帯電話などのPDA以外の機器にPalmOSが搭載されるのは来年の今ごろではないかと推測されています。興味深いのは,インターネットアクセスや電子メールという通信機能が正式にサポートされる点でしょう。独自のインターネットコンテンツも用意されるということで期待が高まっています。ただ,PalmOSが提供するのはユーザーインタフェースであり,基本的にはBluetoothで携帯電話とつなぐというような次世代の通信機器を想定しています。もちろん,PDCなどと接続することは可能であり,メールの送受信がより快適になりそうです。またPalmOS 4.0では音声通話機能を取り込むことをテーマに掲げているので,携帯電話そのものに組み込まれることを意識しているのかもしれません。現状ではCPUの縛りがあるので,すぐにPalmが電話機として普及することはまだ想定しにくい現状ではあります。
(わたなべけんいち)
現時点で一番新しい日本語PalmOS搭載機「CLIE PEG-N700C」(詳しくは,「/Vmag.exPRESS」p.133を参照)。この次の世代からPalmOS 4.0搭載機になる予定だ