スキャナの1パスと3パスはどのように違うのでしょうか。またそれぞれのメリット/デメリットを教えてください。
スキャナは,原稿に光を当て,反射した光をCCDやフォトマルチプライヤ(光電子増倍管)といったセンサーによって感知することで画像を取り込みます。ご存じのとおり,すべての色彩は3原色の掛け合わせで表現できるので,光の場合はR(赤),G(緑),B(青)のそれぞれの濃淡を測定してデータ化すれば,元のカラー画像を再現できるわけです。
原稿を電気信号(RGBそれぞれのデータ)に変換する方式として,
・フィルタ切り替え
・光源切り替え
・カラーCCD
の3種類があります。
フィルタ切り替え方式は,フィルタをRGBで切り替えて原稿を3回走査して読み取ります。光源切り替え方式は,RGB3色それぞれの光源を備えて,それらを順番に切り替えながら走査します。このとき,3回に分けて読み取る場合もあれば,光源を高速に点滅させて1回で読み取る場合もあります。最後のカラーCCD方式は現在のスキャナの主流で,カラーCCD自体がRGBのフィルタを装備している形なので,1回の走査で読み取れます。
以上のように,RGBを各1回(計3回)のスキャンで読み取るのを3パス(面順次)方式といい,逆にRGBを1回で読み取るのを1パス(線順次)方式といいます。
3パス方式は純粋な単色成分を取り出せるのがメリットですが,読み取りに時間がかかるのがデメリットです(ただし,光源を大きくすることによってスキャン速度を改善できます)。また,スキャン中に原稿が動いたり,センサーの位置精度が悪かったりといったことがあると,色ズレを起こしやすいのも欠点です。
1パス方式は読み取りが速く,理論的には色ズレも起きないはずですが,実際にシャープな画像が得られるかどうか,3パス方式のように正確な色分解ができるかどうかは,そのスキャナのセンサーの能力や機械部分の性能に左右されます。最近のスキャナは,機械部分の性能が上がったためか,1パス方式を採用しているものが圧倒的に多いようです。
(伊勢雅英)