Ultra Wide SCSIなのに速くない?!

Ultra Wide SCSIが高速だと聞いたので,さっそくUltra Wide SCSIに対応したSCSIカードとHDDを購入して,ベンチマークテストを実行してみました。しかし結果は8MB/sec程度であり,予想したとおりの数字が出ません。なぜでしょうか?


たしかにUltra Wide SCSIは最大40MB/secと非常に高速なインタフェースで,PCIバス(32ビット,33MHz)の3分の1にも相当する速度を有しています。SCSI市場でも急速にシェアを伸ばしており,現在Ultra Wide SCSIに対応したHDDは数多く発売されています。もし,これらのHDDが40MB/secという速度で読み書きできるならば,さぞかし快適なことでしょう。
 ベンチマークで思ったほどの数字が出ないのは,ずばりHDDが8MB/secでしか読み書きできないからなのです。40MB/secという数字はあくまでもHDD(上のバッファ)とホストアダプタ間の最大転送速度であって,実際にHDDがヘッドから読み書きする速度ではありません。このように実際に読み書きする「本当の」速度のことを,内部転送レート(Internal Transfer Rate)またはメディア転送速レート(Media Transfer Rate)と呼びます。内部転送レートは,メディア(円盤)とHDD上のバッファとの間の転送速度を指しており,まさにヘッドから直接読み書きする速度を意味しているわけです。

 HDDメーカーのWedサイトで製品仕様書(Specification)が入手できると思いますが,そこには必ず内部転送レートの記載があります。例えば,Seagate Cheetah 4LPならば122〜177 Mbps(約15.3〜22.1MB/sec)と記載されています。つまり,インタフェースがいくら速くても22.1MB/secよりは高速に読み書きできないことを意味しているのです。このHDDは大変高速な部類に入りますが,もし普及タイプの製品か一昔前の製品であればせいぜい10〜15MB/sec程度の内部転送レートしか持っていないことでしょう。また,これらの数字は未フォーマット時の転送速度を表していることがほとんどですから,フォーマット後の転送速度はさらに遅くなると考えてください(例えばSeagateの仕様書には,フォーマット後の内部転送レートを表す「Internal Formatted Transfer Rate」という項目があります)。
 では,Ultra Wide SCSIの40MB/secという速度は,いったいどこで発揮されるのでしょうか。それは,単純に40MB/secという実効転送速度を持つデバイスを接続した場合に限ります。しかし,このような転送速度を持つデバイスは個人向け製品にはまったくといっていいほど存在しません。一般的には,9台構成以上の中型または大型ディスクアレイ,半導体メモリをディスク代わりに用いたソリッドステートディスクなどが挙げられるでしょう。大きさや価格面から考えても,企業レベルでなければ導入できないようなものばかりです。Ultra Wide SCSIとは,このようなハイレベルな利用にも十分耐え得るように生み出されたものであると考えるのが妥当ではないでしょうか。
(伊勢雅英)