ノートPCでクロックアップするには?
私はLibretto SS 1000のユーザーですが,ノートPCもデスクトップPCのようにクロックアップできますか?
すべてのノートPCがクロックアップできるとは限りませんが,Libretto SS 1000はCPUにMMX Pentium/166MHzを搭載しているので,最高266MHzまでクロックアップすることが可能です。
●クロックの設定方法
PCのCPU動作クロックは,CPU内部のクロック倍率とマザーボードのFSBクロックによって決定されます。
クロック倍率とは,CPUをFSBクロックの何倍で動作させるかを決める倍率のことです。インテルのWebサイトからMMX Pentiumのデータシートを入手すれば分かりますが,Libretto SS 1000に搭載されたTCPタイプのPentiumでは,CPUの184〜186ピンにかかる電圧の違いで,クロック倍率が決まります。例えば,FSBクロックが66MHzなら,CPUクロックは表1のようになります。
FSBクロックはマザーボード上で基本となるクロックのことで,メモリアクセスなどマシン全体の処理速度に影響します。多くのノートPCは「PLL IC」と呼ばれるチップを使用してFSBクロックを発生させるので,マザーボード上から「ICS」「MICRO CLOCK」と書かれているチップを見つけて,チップに書いてある型番を頼りにチップメーカーのWebサイトからデータシートを入手しましょう。
あとはクロック倍率と同じ手順で希望のCPUクロックに設定します。ただし,PLL ICがいくら高クロックに対応していても,マザーボードが高クロックに対応していないこともあります。通常はFSBクロックが60MHzのマシンを66MHzへ変更する程度です。
ノートPCのクロックアップ作業はデスクトップPCと原理的に変わりませんが,ノートPCの多くはマザーボードを小型化するためにデスクトップPCのようなクロックを変更するジャンパを用意していません。そこで,チップジャンパと呼ばれる0オームのチップ抵抗を使用するのが一般的ですが,一番の問題はクロックを設定する回路の見つけ方です。
クロックを設定する回路はクロックを決定するピンからマザーボードの回路を追って探し出します。話を聞いただけでうんざりするかもしれませんが,実は少しコツがあります。クロック倍率の場合はCPUのすぐ近く,FSBクロックの場合はPLL ICの隣にあることが多いので,テスターを使って逆にたどると早く見つけられます。いい機会なので,ここではLibretto SS 1000と同じMMX Pentiumを採用したノートPCのクロックアップ方法をいくつか紹介します。
ハンダ付けに自信のない人はマクサスアップグレードサービス(問03-5296-0486)のようなアップグレード業者へ頼みましょう。
(関口哲司)
●参考ホームページ
インテルのWebサイト
http://www.intel.com/
●データシートの所在
http://developer.intel.com/design/mobile/datashts/
※PDF形式のファイルを閲覧するには,Acrobat Readerが必要となる。
(関口哲司)
表1 CPUクロックの設定基本パターン(FSBクロック66MHz)
CPUクロック |
133MHz
|
166MHz
|
200MHz
|
233MHz
|
266MHz
|
クロック倍率 |
2.0倍
|
2.5倍
|
3.0倍
|
3.5倍
|
4.0倍
|
184ピン(BF2) |
0
|
0
|
0
|
0
|
1
|
185ピン(BF1) |
1
|
0
|
0
|
1
|
0
|
186ピン(BF0) |
0
|
0
|
1
|
1
|
0
|
※参考資料「MOBILE Pentium PROCESSOR WITH MMX TECHNOLOGY ON 0.25 MICRON」
表2 クロック倍率の設定パターン(Libretto SS 1000/1010の場合)
CPUクロック |
233MHz
|
266MHz
|
クロック倍率 |
3.5倍
|
4.0倍
|
184ピン(BF2) |
0
|
1
|
185ピン(BF1) |
1
|
1
|
186ピン(BF0) |
1
|
0
|
図 TCP Pentiumの184〜186ピンの位置

1番ピンの対辺にあるピン列の下から24〜26番めが184〜186ピンになる。
184ピンがBF2,185ピンがBF1,186ピンがBF0だ
@Libretto SS 1000/1010
クロック倍率の設定はCPUのすぐ脇にあるクロック設定回路で行う。上からBF2,BF1,BF0へ対応している。
BF1は内部でプルアップされているので,233MHz/266MHzへ変更するには,図のようにチップ抵抗を付け直せばよい。
|
|
|
|
|
 |
 |
|
※理屈では左右をショートさせるべきだが,マクサスの検証ではこのパターンで動作している |
|
ADynaBook SS PORTEGE 3000/3010
クロック倍率の設定はCPUのすぐ下にあるクロック設定回路で行う。一番左がBF0,右にあるパターンの上がBF2,下がBF1へ対応している。
BF1は内部でプルアップされており,ショートさせるとプルダウンに設定される。BF0〜BF2の組み合わせにより,CPUクロックは133〜266MHzまで自由に設定できる。
表3 DynaBook SS PORTEGE 3000/3010のCPUクロック設定
|
133MHz
|
166MHz
|
200MHz
|
233MHz
|
266MHz
|
BF2 |
O
|
O
|
O
|
O
|
S
|
BF1 |
O
|
S
|
S
|
O
|
S
|
BF0 |
O
|
O
|
S
|
S
|
O
|
(S:ショート,O:オープン)
BVAIO 505
CPUクロックはCPUの右上にあるクロック設定回路で行う。JC2, JC3, R10, R11の組み合わせにより,CPUクロックが決定される。
チップ抵抗をJC3へ付ければ,2.5倍に設定される。ただしJC2がショートされている必要がある。
表4 VAIO 505におけるCPUクロック設定パターン
|
133MHz
|
166MHz
|
200MHz
|
233MHz
|
JC2 |
S
|
S
|
O
|
O
|
JC3 |
O
|
S
|
S
|
O
|
R10 |
O
|
O
|
S
|
S
|
R11 |
S
|
O
|
O
|
S
|
(S:ショート,O:オープン)
CVAIO PCG-C1
CPUクロックの設定はCPUの160ピンの近くにあるクロック設定回路で行う。左から,1〜7の番号を振ると,BF0は6-7,BF1は1-2,BF2は3-4の組み合わせにより,プルアップとプルダウンを設定する。5にあるチップ抵抗はプルアップに使われていると推測される。
BF2にあるチップ抵抗をすぐ右にある空きパターンへ付け直せば,266MHz(66MHz×4.0)化される。
なおショートするときは各組み合わせの左列をショートさせること。
※改造は,あくまで自己責任で行ってください。