電話とPCの間が5メートルほど離れています。この場合モデムをPCの近くに置くのと電話の近くに置くのとではどちらがいいでしょうか。
図でいうとAのほうが望ましいと思います。これは,電話とモデム間で使用されるいわゆる電話線が長距離の伝送に対して強い作りになっているという点が第一の理由に挙げられます。
物理的な話になりますが,電話線が一般のケーブルと異なるのは,「無装荷ケーブル」であるという点です。伝送品質(位相ひずみ,反響現象,周波数特性)などの点から装荷(適当なインダクタンスをケーブルに直列に挿入すること)を施さないほうが望ましいという理由で提唱されたものです。一般的には,長距離の搬送用ケーブルとして用いられます。海底ケーブルができたのも,この無装荷ケーブルのおかげです。
一方で,モデムとPC間を接続するRS-232Cシリアルケーブルは,長距離伝送にはあまり向かない構造になっています。経験的な数値ですが,だいたい10〜20mが最大だと思います。しかし,これも低速での伝送を元にした数値ですから,現在のモデムのような28800bps以上の装置(DCE)との高速伝送では,できるだけ短くしたほうがいいでしょう。
以上のような理由で,電話線は長くてもモデムとPC間はできるだけ短くしたほうがいいと思われます。また設置の問題(RS-232Cのケーブルは一般的に太い)や経済的な理由(RS-232Cケーブルのほうが高価)を考えても,電話線を長くするほうがよいでしょう。
(伊勢雅英)
モデムと電話とPCの配置