IPヘッダー圧縮

ダイヤルアップネットワークのTCP/IPの設定で「IPヘッダー圧縮を使用」という設定項目がありますが,これはどのようなものなのでしょうか。


TCP/IPを使った通信(インターネット)は,データをパケット(小包)単位に分割して送信します。IPパケットの大きさは,そのときどきにより異なりますが,パケットの先頭には,
・パケットの宛先のIPアドレス
・パケットの送信元のIPアドレス
・パケットの品質
・パケットのデータやヘッダの長さ
・パケット分割のための情報
・パケットに包まれたデータの種類
・パケットの生存期間
・チェックサム
・オプション
といった,そのパケットの属性や配送先を示す情報が格納された「IPヘッダー」が必ず付加されています。IPヘッダーは小包の宛先ラベルのようなものです。ルーターは,このIPヘッダーに埋め込まれている宛先アドレスと,自分が所持しているルーティング情報を参照して,その宛先があると考えられる方向へパケットを送信します。また,例えば生存期間が切れているパケットを破棄するなどの操作も行います。IPヘッダーの大きさはオプションを持たない場合で20オクテット(通信の世界では1バイトを1オクテットと表現します),オプションを持つパケットの場合は,さらに大きなサイズになります。
 したがって,IPで通信をする場合,たとえ相手に1バイトのデータを送信するときでも,回線を流れるデータは20バイトを超えるわけです。十分に高速な回線では,IPヘッダーをそのままの形で送受信しても速度が低下するなどの問題にはつながりませんが,PPPを使ったシリアルデータ通信回線など低速な回線を用いる場合は,IPヘッダーによるオーバーヘッドがもたらす通信速度の低下の影響を無視できません。
 そこで,PPPを使った1対1のIP通信で,IPヘッダーを圧縮して少しでも効率を上げようというのが「IPヘッダーの圧縮」ということになります。インターネットでは一般に,VJ(Van Jacobson)圧縮という形式が用いられており,このオプションを有効にするには,当然のことながら接続する双方がこの圧縮に対応している必要があります。
 一般的なプロバイダのPPPサーバーは,ほとんどすべてVJ圧縮に対応しています。ただし,例えばISDNやPHSデータ通信などでは,圧縮を使わない設定にしないと正常に接続できない場合もあるようです。圧縮を有効にして正常に接続できない場合,プロバイダが公開している接続情報を参照し,VJ圧縮に対応しているか調べる必要があります。
(米田 聡)


ダイヤルアップネットワークのTCP/IPの設定