AT/ATX対応ケースの違いは

AT/ATX両方のマザーボードが使えるケースはありませんか。AT用,ATX用のケースでどんな違いがあるのでしょう。


AT/ATX用ケースの違いはそのままAT/ATXの規格の違いになります。マザーボードの取り付け部分に関してはある程度互換性が確保されており,バックパネル部,電源部の違いがそのままケースにも当てはまります。
 AT用ケースではバックパネルに8個の拡張スロット,キーボードコネクタの位置(PS/2仕様ではキーボードとマウスコネクタ)のみが定義されており,電源のON/OFFはスイッチを使ってハードウェア的に行われます。
 ATX用ケースではバックパネル部に7個の拡張スロット(AT用でいう最上段部がない),さまざまなコネクタを実装するためにI/Oパネル部(位置のみが決められ,パネル自体は交換できる)が定義され,電源のON/OFFはマザーボードを介するため,ソフトウェアで制御することも可能です。
 I/Oパネル部にはキーボード,マウス,シリアル,パラレルなどのコネクタが配置されますが,この配置に関しては明確な定義がなく,マザーボードベンダーにまかされています。
 しかし,このままではケースに付属するI/Oパネルとマザーボードのコネクタ配置が一致しないと使えなくなってしまうため,現在はコネクタを1列に配置したタイプ,2段に配置したダブルデッカーと呼ばれる2種類のタイプに収束しつつあります。
 AT/ATX両用ケースの最も単純なものは,バックパネル部をATX仕様としながら,AT仕様のキーボードコネクタが利用できるI/Oパネルを付属させることでAT仕様のマザーボードが利用できるようにしています。電源部はまちまちですが,単純にAT仕様の電源が付属し,ATX仕様として使用する場合は電源部を交換するもの,AT/ATX両用の電源部が付属するものもあります。
 一部のATXマザーボードではAT仕様の電源も利用できる製品がありますから,この場合はAT仕様の電源でもそのまま利用できます。その場合でも,基本的にAT仕様マザーボードの最上段に当たる拡張スロットは使えません。
 AT/ATX両用ケースはそれなりにメリットがありますが,扱いが面倒だったり,使えるマザーボードを選ぶ場合もあります。どうしても一時的にAT仕様のマザーボードを使いたい場合や,買い替えが容易でない高価なタワー型ケースを除けば,あえてこのような過渡的ケースを購入するメリットはさほど大きくないでしょう。
(坪山博貴)


FICのPA-2010+。AT/ATX両方の電源コネクタを実装している。