Windowsファミリーの今後

Windows 98以降の,Windowsファミリーのロードマップを教えてください。


正直いって,マイクロソフトの正確なロードマップを知ることは,現在ではかなり難しくなっています。というのは,マイクロソフトの戦略は流動的で,状況に合わせて大きく変化するからです。そのため,必ずしもこのとおりになるとは思えませんが,現時点で分かっている範囲のことをまとめてみましょう。なお,ここに書いてあることはすべて英語版についてであって,日本語版に関しては考慮していません。
 現在のマイクロソフトのOSには,
・Windows 98
・Windows NT
・Windows CE
の3種類が存在します。
 COMDEX/Spring'98で発表された時点でのマイクロソフトのOS戦略は,Windows NTを多くのハードウェアやソフトウェアに対応させてサーバーなどを中心とした最上位に位置づけ,Windows 98は一般家庭および小規模ビジネス向けに,Windows CEは組み込み用途向けに提供するという形になっています。
●Windows NT
 各OSの展開ですが,まずWindows NTは次期バージョンであるNT5.0発売に向けて開発が進められています。NT5.0は,現在マイクロソフトが最も力を入れて進めているプロダクトといっていいでしょう。しかし,NT5.0は開発が遅れていて,これがOS戦略全体に影響を及ぼす可能性は高いと思われます。例えばNT5.0は,当初β2が今年前半,β3は予定になく,製品が今年中にリリースされる予定だったのが,β2が今年の夏になり,β3が年末にリリースされ製品は来年と,大きな遅れが生じているのです。
●エンドユーザー向けWindows
 これに対して,繰り返し公言されているためほぼ間違いないと思われることは,Windows直系のOSは,Windows 98が最後になるということです。
 では,いわゆるエンドユーザー向けのOSは今後どうなるかというと,Windows NTの後継バージョンがその位置に新しく用意されることになります。これは,非公式に「NT6.0 Consumer」などと呼ばれており,「NT6.0 Enterprise Edition」などと近い時期のリリースを予定しているようです。そのため,次のエンドユーザー向けWindowsは,少なくともNT5.0が発売され,NT6.0のリリース時期が判明しないと見えてこないといえます。
●Windows CE
 Windows CEは,マイクロソフトの一番新しいOSで,そのほかのWindowsよりも用途を限定しているのはご存じのとおりです。現状ではWindows CE 2.0が出ていますが,Windows CEは用途ごとにさまざまな形のものが出てきます。
 Windows CE 2.0でも,パームサイズPCのように,液晶タッチパネルをペンで操作するPDAに近いものから,車に搭載されるAutoPCや,「ハンドヘルドPC」と呼ばれるものなど,製品の形態によって内容が変わってきます。また,Web TVなどの「セットトップボックス」と呼ばれる端末や,Windows Based Terminalといった端末用OSとしても,Windows CEは使われることになっています。つまり,Windows CE 2.0というOSの中から,必要な部分だけを抽出して,さまざまな用途向けのパッケージを作るといった形です。イメージとしては,Windows NTのWorkstationとServerの違いに少し似ているかもしれません。
 Windows CEは組み込み用途向けなので,さまざまなCPUに対応しています。このことからも推測できるように,Windows CEはx86に特化したWindowsではなく,Windows NTをベースとして開発されているのです。そういう意味でいえば,マイクロソフトのOSは,すべてWindows NTをベースとしたコードに収束していくといってもいいでしょう。
 存在がほのめかされたものの,製品化が曖昧なのがEmbedded NTです。これは,リモート管理やフラッシュメモリからのブート,少ないメモリでの動作や組み込み向けにリアルタイム性,ディスクレスなどの特徴を持ったWindows NTベースのOSです。Embedded NTは,Windows CEとアプローチがかなり近くなるうえに,開発を中止するという発表も出ていましたが,どうやら10月のProfessional Developers Conferenceでプレビュー公開されるようです。
●今後のスケジュール
 さて,これらのOSの具体的なスケジュールですが,まず,8月18日にシアトルで開かれたNT5.0 Reviewers Workshopで,NT5.0β2がリリースされたのが一番新しい動きです(p.212「NTでポンすぺしゃる」参照)。そのNT5.0ですが,最近マイクロソフトから,NT 5.0β3を11月下旬までに,ファイナルコードをその12〜15週間後に提供できそうだという発表がありました。
 また,β2のリリースの後,現時点でのNTの最新版であるNT4.0のService Pack 4がリリースされます。これは,かなり近い時期になる予定で,この中には以前はNT5.0に含まれるといわれていた機能が装備されているとのことです。
 Embedded NTは,前述のようにプレビューは予定されているものの,製品化に関してはまったく未定です。
 Windows 98に関しても,Service Pack 1 for Windows 98が,8月にβ版をリリース,9月ごろに正式リリースされるとなっていましたが,この作業はどうやら遅れているようです。Windows 98用のService Packは,主にバグフィックスが中心になるようです。
 マイクロソフトは,すでにNT5.1やNT6.0に関してもいくつかの発表を行っており,NT5.1のコードネームは「Asteroid」,NT 6.0は「Neptune」と呼ばれているという話が流れてきています。
 いずれにせよ,これからのマイクロソフトのOSは,NT5.0が大きなキーポイントになるのは間違いないといえます。
(恣岡 悄)