100倍速CD-ROMドライブのひ・み・つ

最近,秋葉原などで「最大100倍速」と書かれたCD-ROMドライブを見かけますが,これはどのような仕組みになっているのでしょうか。


普通CD-ROMドライブの速度表示は標準速(150KB/sec)に対して,何倍高速に読み出し(=データ転送)ができるかを示しています。10倍速なら1500KB/sec,20倍速なら3000KB/secということになります。
 100倍速というと15000KB/sec,つまり15MB/secとなるはずです。転送速度を稼ぐためには回転数を高める必要がありますが,実際にこのようなドライブを作ろうとすると回転数が高くなりすぎてしまい,ドライブからディスクを取り出そうとしたときにディスクが飛び出してユーザーがケガをしてしまう恐れもあります。HDDは密閉され,さらにディスクがしっかり支持されているから回転数を上げられるのです。また,CD-ROMドライブの場合でも24倍速ドライブでは最大6000回転/secもの速度で回っています。また,高速動作をさせると振動も大きくなりますし,駆動系の消耗を早めるため,むやみに回転数を上げるわけにはいきません。
 現在秋葉原に出回っている「最大100倍速」ドライブである,日本EliteのSMART 100xの場合は,実はドライブ自体は12倍速,転送速度も1800KB/secです。最近,市販ソフトでCD-ROMを高速化させるユーティリティがありますが,SMART 100xにはそういったソフトと同じ理屈のものが付属しており,HDD上にCD-ROM専用のキャッシュ領域を設け,実際のアクセスはそこを経由して行われます。
 一度キャッシュに入ってしまえば,その後の読み出しはHDDから行われますので,「HDDの速度=CD-ROMの見かけ上の速度」となります。CD-ROMと同容量(650MB)の空き領域(通常使用パーティションとは別にする必要があります)を用意すれば,ほぼそのままHDDの速度で「CD-ROM」にアクセスできるようになります。
 このとき,シーク速度まで含めて考えれば,一般的な10倍速CD-ROMドライブが100ms前後(SMART 100xは150msです),HDDは9〜12ms程度ですので,最大100倍速というのも実現し得る数字だといえるでしょう。ただし,HDD上に専用パーティションを必要とする,ドライバのあるOS以外ではまったく無力であるといったデメリットがあります。
(アーカイブTech Lab.菊地 潤)




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