Linux Kernelの最新版 2.4が正式リリースされるそうですが,何が変わりますか?
前バージョン 2.2.xから約2年ぶりに改訂された最新安定Ker
nel 2.4では,主に大きく分けてデスクトップ(ワークステーション)とサーバーの機能強化,および改善が行われています。
一般に利用されるPC分野では,最新の3Dビデオカードのサポート,PnP ISAカード,普及が進んでいるUSBの対応により,USB接続のプリンタ,スピーカー,デジタルカメラ,スキャナ,モデムのサポートが新たに追加されています。また,これまで各ディストリビューション単位で追加修正が行われていたPnP ISAデバイス,およびPCMCIAがカーネルに取り組まれたことで自動認識が行われるようになっています。
またサーバー/エンタープライズの分野においては,最大64GBの大容量メモリへの対応(x86系 CPUプラットフォーム環境),SMP(Symmetric MultiProcessing :対称型マルチプロセッシング)における性能向上,rawデバイス,LVM(論理ボリュームマネージャ),NFSバージョン 3など大規模なリソースを必要とするうえで必要不可欠で重要な改善,およびスケーラビリティの向上が図られています。
●Linux Kernel 2.4のPC以外への影響
これらの改善が与える影響としては,PC/サーバー用のOSとしての利便性の向上は当然のことながら,別の側面での影響も考えられます。現在,Linuxは組み込み用のOSとして評価され始めています。先ごろ発表のあった日立製作所のFLORA-ie55miといったCrusoe搭載のインターネット端末(アプライアンス)でもシリコンディスクにMobile Linuxを搭載してデビューするなど,その搭載事例が格段に増えています。Geode,Crusoeといった省電力CPUを用いたアプライアンスの世界に,前に挙げたデバイスが早いうちに利用可能になることを意味します。
とくに,これらのアプライアンスの中でも,セットトップボックス(テレビ接続型のインターネット端末)で利用するためテレビに最適化したKernel 2.4を利用するDV Linuxというものがあり,開発が進められています。米Indremaは,そのDV Linuxを利用して,DVD再生,インターネット閲覧,メール,テレビ録画,MP3再生などが可能なHDD内蔵のコンシューマゲーム機「The L600 Entertainment System」を9月に299ドルでリリース予定です。このゲーム機では前面に4個のUSBポートが搭載されます。
ちなみにこのゲーム機は開発キットも早期から一般にも入手できる形で配布されており,また,コアにLinuxを利用することからゲームメーカーの新規参入も格段にしやすくなっています。また,ハードウェアは600MHzのx86系CPU,ビデオチップにNVIDIAのNV20,そして10GBのHDDを搭載する予定です。
●すぐに変える必要があるか?
さて,気になる最新Kernel 2.4へのバージョンアップの必要性ですが,USB機器などの新しい機能を利用するのでない限りは,急いで作業を行う必要はありません。
たとえ正式リリースされたカーネルは開発者などによるテスト済みでも,さまざまなシチュエーションでの活用により新たな問題が見つかる可能性があるからです。すでにレッドハット,ターボリナックスなど各ディストリビュータが,2.4を採用したパッケージの準備を開始しているので,正式に発売または公開されるのを待つのも一つの手段です。
Linux Kernel 2.4へのカーネルのバージョンアップは,p.282の「PC UNIX登龍門」にて紹介しているのでそちらを参考にしてください。
(沢登健二)
Indremaの「The L600 Entertainment System」。10GBのHDDを内蔵し,テレビ録画からインターネット,メール,DVD再生などができる期待のコンシューマゲーム機だ
Indrema http://www.indrema.com/