K6には「XTコア」と呼ばれるコアを採用しているものがあるらしいですが,これはそれまでのものとどう違うのですか。
'98年秋ごろ以降に製造されたK6-2は,一般に「XTコア」と呼ばれる新しいコアを採用しています。XTコアでの改良点はメモリアクセス関係に集中しており,目立つのはL1キャッシュでWrite Allocate可能なメモリが,それまでの500MBから4GBに拡張された点です。Write Allocateとは,ライトバック動作時にキャッシュにヒットしない書き込みが発生した場合,書き込みが行われるアドレスのデータを1ライン分(32バイト)キャッシュに読み込み,キャッシュにヒットした場合と同じ状態にするものです。こうすると近接したアドレスに連続して書き込みが発生したときに,毎回メモリに実際に書き込む必要がなくなるので,処理が高速化されます。
キャッシュされないメモリエリアでメモリアクセスを改善する機能としては,WC(Write Combining)という機能も持っています。これはCPUの書き込み単位である8バイトのバッファを新設し,これより小さな単位の近接したアドレスへの書き込みをまとめて行うものです。WCは先頭アドレスとエリアサイズで有効なアドレス範囲を設定できます。一般にWCはビデオメモリのアドレスに設定します。
これ以外にもいくつかの改善点が存在します。
XTコア登場当初は,Write Allocateを有効にするためのコントロールレジスタが変更になったため,それまでのK6-2に対応したBIOSを搭載するマザーボードでも,Write Allocateが無効になってしまうことが問題になりました。CPUの基本仕様が変わっていないのにK6-2/350MHz,400MHzで新たにBIOSの対応が必要だったのはそのためです。Write Allocateが無効でも動作に問題はありませんが,処理速度は低下するようです。
XTコアのK6-2ではクロックアップ耐性が上がったといわれていますが,これはコアの仕様変更が原因ではなく,製造技術の向上によるものと思われます。
(坪山博貴)