MPUとCPUの違いがよく分かりません。どこが違うのですか。
MPUは「Micro Processing Unit」,CPUは「Central Processing Unit」の略です。
MPUは「Micro」という単語の意味のとおり,小さな,具体的には1チップLSIなどに凝縮されたプロセッサ(演算装置)を指す場合に使われます。パソコンのプロセッサ(インテルのCPUなど)もMPUの一種ですし,そのほかにプログラマブルに機能するDSP(Digital Signal Processor)チップもMPUと呼ぶことがあります。
一方,CPUは広い意味での中央演算処理装置を指すときに使われることが多く,ありていにいえば,漠然とシステム全体の中で演算処理を行う実体を指します。例えば,パソコンの中ではMPUが中央演算処理装置の役割を持つのでCPUと呼びますし,工場を制御するFAシステムの中ではPCそのものがCPUと呼ばれることもあります。また,LSIのブロックダイアグラムの中では演算器をCPUと呼ぶことがあるなど,対象となるシステム全体の中で演算処理を行っている装置を漠然と指すため,ケースバイケースでCPUになる装置は異なってきます。
私たちに縁が深いパソコンの世界では,歴史的にモトローラがMPUという言葉を好んで使い,インテルはCPUという言葉を好んで使ってきました。モトローラのMC680x0やPowerPCは同社のカタログでMPUと呼ばれることが多く,インテルはPentiumUやPentiumをCPUと呼ぶことから,質問のような混乱が起きるのだろうと思います。
これは,もともとLSI専業メーカーのインテルに対して,モトローラがミニコン(昔の大きなコンピュータは数個のLSIでCPUを構成していた)なども手がける総合メーカーであったことから,1チップLSI化された(初期の)機能が限定されたプロセッサのことをCPUとは呼びづらかったのだろうと推測できます。現在は大半のプロセッサがMPUになったため,CPUとMPUの区別はあいまいになっています。
(米田 聡)