以下のような文面のメールを受け取りましたが,このようなウイルスは本当にあるのでしょうか。「もし,「JOIN THE CREW」というタイトルのE-mailを受け取ったら,絶対に開かないでください。もし開いてしまうと,ハードディスクのすべてが消えてしまいます。この文書をできるだけ多くの人に送ってください。これは,新種のウイルスであり,知らない人がたくさんいます」
これは「根も葉もないデマ」で,内容は事実無根です。インターネットで流れるウイルスの噂には流言が多く含まれます。中でも上記のメールは一般にチェーンメールと呼ばれる有名なウソです。チェーンメールは不幸の手紙とよく似ていて,デマが広範囲に拡散するのを発信者が楽しむという,迷惑な目的で流されます(このメール自身がウイルスの一種と考えられなくもないですが)。
インターネットで流れるデマの中で,ウソのウイルス情報と確認されているメールの主なものとして,次のようなものがあります。
・Good Times
・Deeyenda
・Irina
・PenPal Greetings
・JOIN THE CREW
・Returned or Unable to Deliver
これらのデマは本文に多少の違いはあるものの「このようなタイトルを持つメールにはウイルスが含まれているから,すぐに友人に知らせてくれ」と主張する点で共通しています。
繰り返しますが,これらは単なるデマですから,読者が上記の内容を含むメールを受け取っても決して他人に再配布などしないようにしてください。
これらのデマの元は英語ですが,何者かが日本語に翻訳してメールを流したようです。今年8月末〜9月初頭にかけて,日本語に訳されたデマメールがインターネットを駆け巡り,メーリングリストはもちろん,一部の企業では社内に回覧FAXが流される騒ぎに発展しました。根も葉もないデマが途方もない速さと規模で蔓延する,インターネット時代ならではの新しい迷惑の種といえそうです。
今後も,こうしたデマは手を変え品を変え繰り返し流されるでしょう。以前なら,メールを読んだだけで感染するウイルスはないという常識が通用しましたが,Microsoft Word/Excelのマクロウイルス発生以後,メール(文書)を読むだけで感染するウイルスの存在を否定できなくなったのは事実です(もっとも,マクロを実行することと文書を読むことは別の次元と考えられ,そういう意味では現在でも文書を読むだけで感染するウイルスは存在しません)。
そこで,読者が未確認情報のメールを受け取ったさいにとるべき行動を以下にまとめておきます。
・メールの再配布は何があっても行わない
インターネットで流れる伝聞情報は全般に信用できないというスタンスで臨んだほうがいいでしょう。したがって,伝聞情報の全文引用を第三者に送るのは常識的な行動とはいえません。第三者に未確認情報メールを転送しないというのが,チェーンメールを防ぐ第一歩です。
・内容を吟味する
受け取ったメールを無条件に信じないでください。まず自分の頭で考え,メールに不自然な点がないかを疑いましょう。デマならたいてい,おかしな内容が含まれているものです。例えば,前出のメールにはウイルスの対象マシン,対象OSがまったく含まれていません。OSやマシンに依存しないトロイの木馬を作成する方法は(今のところ)ありませんから不自然です。それに「できるだけ多くの人に送ってくれ」という一言が奇妙な印象を与えます。
デマメールに関しては以下のサイトが参考になります。
http://ciac.llnl.gov/(米エネルギー省CIAC)
http://www.ipa.go.jp/SECURITY/index-j.html(情報処理振興事業協会セキュリティ情報)
これらはウイルス関連情報とともにデマに関する情報も公開しています。
自力で判断できない場合は,身の周りにいる,より詳しい人に聞いてみるといいでしょう。ただし,そのさいにも疑わしいメールを全文引用してメールで知らせたり,複数の人に送ったりしないよう心がけてください(質問された人がチェーンメールの新たな発信元になる可能性があるからです)。
・身の周りの人に警告を!
以前はチェーンメールは無視するのが一番とされていました。デマメールを否定するメールがチェーンメール化するからです。しかし,現在は以前なら考えられないほどの規模でチェーンメールが蔓延するため,単に無視するのが必ずしも良いとはいえなくなりつつあるようです。
そこで,内容がウソだと分かったら身の周りの人にデマメールが出回っているという警告を流すといいでしょう。これにより,知らせた人たちがチェーンメールの防波堤の役割を果たすからです。
・添付ファイルに用心する
最後に念のために忠告しておきますが,メールに何かしらの添付ファイルがあり,その素性が分からない場合は決して実行せず,必ず捨ててください。本物のウイルスかもしれませんよ!!
(米田 聡)
デマメールにだまされないために,ウイルス情報を提供するホームページなどで情報を仕入れておこう