CD-RWはなぜ速くならない?

CD-Rは24倍速まで高速化しているのに,CD-RWはなぜまだ10倍速が最大なのですか?


CD-RWの書き込み速度がCD-Rのように高速化しないのは,単刀直入にいえばCD-RWのほうが書き込み処理が複雑で高速化が難しいからです。またCD-RWは互換性確保のためにオレンジブックで書き込み速度まで規格化されているため,ベンダー主導で安易に高速化を行っていないこともあります。
 CD-RもCD-RWも記録層にレーザー照射で熱を加えて書き込みを行い,メディアの反射率の違いをデータとして読み出す点は共通です。ただし書き込みの原理は大きく異なっており,CD-RWのほうがずっと複雑です。
 CD-Rメディアの記録層は色素を含んだ記録材料を使用しており,この記録層はレーザー照射で熱すると色素が変化して(一般的な感覚からいえば焼けて),反射率が変化します。CDへのデータの記録単位は0か1(ピット)なので,単純に記録層に熱を加えるか加えないかの繰り返しです。書き込みを高速化,つまりメディアをより高回転にして記録を行う場合,ピットあたりのレーザー照射時間が短くなりますから,それだけ強くレーザーを照射すれば済みます。実際にはメディア側も高速書き込みに対応し,より小さなレーザーパワーでも適切に反射率が変化するように記録材料を改良しています。
 CD-RWメディアの記録層には相変化記録材料を用いています。CD-RWは書き換えが可能ですから,CD-Rのように記録層の特定部分だけを「焼く」のではなく,常に記録層に熱を加えており,熱の加え方の違いで反射率を変化させています。この熱の加え方が非常にデリケートなのです。
 CD-RWの場合,反射率の違いは記録層が結晶状態(記録材料の分子がきれいに並んでいる)かアモルファス状態(記録材料の分子が不規則に並んでいる)かの違いになります。記録層を結晶状態にするには一定の温度で記録層を熱しつづけ,アモルファス状態にするには記録層を急激に熱した後冷却されるようにします。
 CD-RとCD-RWの記録の違いをレーザーパワーで比較すると,CD-Rではレーザーパワーは0(なし)か1です。CD-RWでは記録層を急激に熱するためのレーザーパワーを3とすれば,結晶状態にするためのレーザーパワーが2,冷却時のレーザーパワーが1です。さらにCD-Rなら記録層を焼くためにレーザーパワーをオン/オフするだけの間に,CD-RWは記録層が急激に熱せられるだけのレーザーパワーを加え,さらに冷却のための弱いレーザーパワーに切り替える必要があります。
 このようにCD-RWの記録原理はCD-Rよりずっと複雑で,その温度管理はずっとデリケートです。このためメディアも1〜4倍記録用,4〜10倍記録用の2種類に大きく分かれており,対応したCD-RWドライブとの組み合わせでしか書き換えはできません。ただ,これから先も10倍速が最大記録速度というわけではなく,さらなる高速化も近々,予定されているようです。
(坪山博貴)



例外的にCD-RWの12倍速書き換えを実現している,サイバーテックの「CyberDrive CW038D」