SoundBlaster AWE64 Goldのデジタル出力端子はどのように使うものなのでしょうか。
最近はデジタル出力端子を備えたサウンドカードが増えてきましたが,マニュアルなどには具体的な接続可能デバイスなどが書かれていないため,使いこなせていない方が多いようです。SoundBlaster AWE64 Goldに搭載されているデジタル端子はS/PDIF(「SONY PHILIPS Digital InterFace」の略)という,民生向けデジタルオーディオ機器では標準的なデジタル信号規格に準拠したものです。民生向けのMDデッキやDATデッキはたいていこの仕様に準拠したインタフェースを備えています。
この端子を使うことの一番大きなメリットは,デジタル→アナログ(D/A)変換部をPC外部に追い出せることです。PC内部にはさまざまなノイズが存在します。サウンドやビデオなどのアナログ信号はこうしたノイズの影響を受けやすく,ノイズへの対策があまり施されていなかったころの機器では,CD-ROMドライブやHDDの動作によってノイズが乗ったり,ひどいものになるとCPUの負荷が高くなっただけでもノイズが乗るという状態でした。
最近では再生品質にも気が配られるようになりましたが,それでも価格との兼ね合いがあり,よほど高価なものでない限り完全なシールド処理は望めません。
ここで大きな発想の転換がありました。考えてみれば単純なことなのですが,アナログ回路がPC内部にあるからノイズが乗るのであって,これを外部に出してしまえばノイズは乗らないというわけです。
PC内部では当然サウンド信号もデジタルデータとして扱われているので,デジタルデータのまま送出し,D/A変換を外部に追い出してしまえば,ひとまずPC内部のノイズからは逃れられます。また,PC用のサウンドカードには,これも価格との兼ね合いからそれほど精度の高いD/Aコンバータは搭載されていません。データを標準的なデジタル信号として取り出せるようになったことで,サウンドカードに搭載されているものより高価で上質なD/Aコンバータと組み合わせられるようになるのも大きなメリットというわけです。ケーブルはコンポジットビデオ用の75オーム同軸が利用できます。
ちなみに,MDデッキのデジタル端子は光ケーブルを使うものが主流で,Sound Blaster AWE64 Goldが採用している同軸タイプの端子を持たないものもありますが,信号そのものは同じです。オーディオテクニカから同軸←→光デジタルの相互変換ユニットが発売されていますので,一度変換ユニットを経由させることで接続できます。
AWEシリーズに搭載されているウェーブテーブル音源,EMU8000チップはもともと本格的なシンセサイザ用として設計されたものであり,現在でも一線級で通用するクオリティを持っています。デジタル出力することで初めて真価を発揮するものといってもよいでしょう。メモリを増設してサウンドフォントを組み込み,デジタル出力端子から上質なD/Aコンバータに接続すれば,安価なボックス型音源よりもよほど良い音がします。拡張スロットを1個ふさいでしまうのが難点ですが,得られる効果を考えれば,その程度のデメリットは帳消しにできるでしょう。
あとは,CD-ROMドライブが備えているデジタルオーディオ端子(現時点でもほとんどのドライブが持っています)からの信号や,外部のデジタルオーディオ機器からのデジタル信号を直接サウンドカードに入力できるようになると,ノイズフリーに近づきます。すでにそのような機能を持つカードも登場し始めており,今後も採用例は増えていくと思われます。
(菊地 潤)
SoundBlaster AWE64 Goldのデジタル出力端子