PC/100対応メモリと非対応メモリは同じものであるというウワサを聞いたのですが,本当ですか。
PC/100対応をうたっている,という事実がすでに「別モノである」ことを示しています。そもそもPC/100とはインテルが出した「PC SDRAM Unbuffered DIMM Specification」という規格を満たすDIMMに対して便宜上使われる,いわば通称であり,信号レベルでのタイミングの規定のほか,SPD(Serial Presence Detect)という256バイトのEEPROMを搭載し,ここにさまざまな情報を格納して,ホスト側から情報を取得できるようになっている必要があるなど,いろいろな条件があります。もちろんSPDに含まれるべき情報もちゃんと規定されています。
なぜこんな話を持ち出すかというと,(最近は知りませんがちょっと前には)SPDが載っていないとか,SPDは載っているが,情報が足りないPC/100対応メモリという,明らかに定義から外れるPC/100メモリが売られていたからです。これらのDIMMは,メモリの電気的特性は100MHz駆動に堪えるものであっても,厳密な意味でのPC/100対応メモリとはいえません。したがってこの場合,メモリチップ自体は同じものですが,全体として見れば明らかに違うものといえます。
あるいは,PC/100向けにアクセスタイムが6〜7nsecのSDRAMチップを作っているメーカーの立場で考えてみましょう。例えば製品検査の段階で,6nsecでは動かないが10nsecでは動く,というチップを不合格品として捨てるくらいならば,10nsecのラベルを貼って出荷するほうがいいと考える場合もあるでしょう。この場合,検査に通ったチップと通らなかったチップを使った各々のSDRAMは,片方はPC/100対応として売ることができ,もう片方は非対応として売らざるを得ません。こうした場合,この二つを同じものと呼ぶか違うものと呼ぶかは微妙な問題です。
つまるところ,同じか違うかという議論は,物理的な構造とか品番といった以前の問題となります。つまりメーカーがPC/100の規格を満たしていると保証しているのがPC/100対応メモリであり,非対応メモリはこの保証がないというだけの違いでしかありません。一部マザーボードにはSPDを当てにしないものもあるので,こうしたマザーボードならばSPDなしPC/100もどきメモリでもPC/100対応メモリ同様に動くでしょうし,アクセスタイムがPC/100規格を満たさないメモリチップを使ったSDRAMでも,冷却風や電源電圧を工夫すれば100MHzでのアクセスが間に合うかもしれません。したがって,動く動かないという話と同じか否かという話は同一の次元では語れませんし,このため同じか否かという質問に対しては「異なる」としか答えようがないわけです。
(大原雄介)
PC/100正式対応メモリ。右下の小さいICがSPDチップ