巨大なHDDが容易に入手できるようになったのはいいのですが,丸ごとバックアップを取るにはどんな方法があるのか教えてください。
ディスクが壊れることに備えるにはバックアップが常識ですが,実際,どんなものでバックアップできるのかはイメージがわかない人もいるでしょう。大容量のHDDをバックアップする場合,まずはメディアを考える必要があります。バックアップメディアといっても,ケースバイケースで何がいいかは違ってきますが,考えられるものを列挙してみましょう。
●テープ系
HDDのバックアップメディアの定番は,実はいまだにテープメディアです。テープへのバックアップはツールを使えば自動化でき,テープ1巻でバックアップが可能なら,テープの入れ替えがいらないため,完全自動化も不可能ではありません。
テープといってもさまざまな種類がありますが,主要なモノを挙げておきましょう。
・DDS(Digital Data StorFage)
ソニーやヒューレット・パッカードが共同で開発した,現在の主流のテープ規格です。家庭用ビデオで培われた回転ヘッドを使い,幅4mmの小型テープメディアにバックアップを行うシステムです。
容量は最大のDDS-4で24GBと非常に大きく,圧縮技術を併用して1巻当たり40GB以上の容量を達成している製品もあります。ただし,ドライブがまだ高価なのが難点です。
・QIC系
DDSの前は,伝統的なバックアップメディアであるQIC系が盛んに使われていました。メディアがやや高価ですがドライブは安価です。データ転送速度は非常に遅い(最大でも500KB/sec程度)のですが,自動化すれば問題はあまりありませんでした。ただQICのテープは最大でも15GBで,現在の大容量HDDで利用するには複数のテープを利用せざるを得ません。オートチェンジャーなど特殊機器を利用しない限り自動化は無理です。
そういうこともあり,現在はQICからDDSへの乗り換えが進んでいます。
・8mmビデオテープ(Exabyte)
QICと並び,盛んに利用されているメディアで,現在もワークステーション系ではよく利用されています。1巻当たり2GBのメディアが主で,ドライブに内蔵されたデータ圧縮で2倍程度の容量までは記録できます。
そのほかにも,DLTなど特殊な大容量/高速テープシステムもありますが,PCで利用するのであれば,上の3種類が現実的でしょう。といっても,現在の超大容量HDDに見合う容量を備えたメディアは,せいぜいDDSくらいです。
●ディスクメディア系
変則的ではありますが,光ディスク系メディアを複数枚使ってバックアップする場合もあります。
・CD-R/RW
広く普及してきたCD-R/RWをバックアップ用として使う手はあります。といっても,1枚当たりせいぜい700MBという容量は現在のHDDには力不足です。一部のデータに限定して,ワンポイントバックアップを行うといった程度にしか使えません。
・MO
3.5インチMOでも,GIGAMOの登場で1.3GBの記録が可能です。容量的には力不足ですが,複数枚を使用すれば,なんとかバックアップに使えるといったレベルです。メディアがやや高価なのが難点といえるかもしれません。一方,大容量の5インチMOはありますが,こちらはPCで使うのは非現実的です。ドライブもメディアも高価だからです。
・DVD系
DVD-RAM(片面2.6GBまたは片面4.7
GB)やDVD-RW(片面4.7GB)は,大容量でMOよりはバックアップ用として使いやすいのですが,ややメディアが高価なのが難点です。これから価格も下がってくると考えられるので検討するのは悪くないでしょう。
現時点ではHDDのバックアップには,いずれもやや問題を抱えていることが見て取れるでしょう。どのメディアでも現在の大容量HDDを丸ごとバックアップするのに利用するには,ややつらい容量です。例外的にDDSがありますが,ドライブとテープの価格を考えると,PCレベルで使うのは少し現実的ではありません。となると,HDDを丸ごとバックアップするには,同じHDDをもう1台用意して複製するというのが,実はとても現実的な方法になります。
複製の方法としては,RAIDのミラーリング(RAIDレベル1)を利用して常にHDDの複製をシステム内に用意しておくのが,最も安価で簡単な方法になります。また,HDDのバックアップを取るための専用のマシン(写真)などもあります。これは個人での使用はコストの面で難しいと思いますが,会社の部署単位で利用するなら不可能ではない選択肢でしょう。
(米田 聡)
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