ニッカド電池とニッケル水素電池はどう違うのでしょうか。
ニッカド(Ni-Cd)電池は,正極に水酸化ニッケル,負極にカドミウムを用いています。放電時にはカドミウムと電解液中の水酸イオンが反応して電子を放出し,これが電気の源となります。充電時は,負極が電子を取り込んで,酸化カドミウムがカドミウムに変化して元に戻るという仕組みになっています。エネルギー密度が,後述するニッケル水素(Ni-MH)電池と比較して70〜80%前後であること,何といっても公害の元になるカドミウムを使っているという関係で,現在ではあまり推奨されていません。
ニッケル水素電池は,正極は水酸化ニッケル,負極にはカドミウムの代わりに水素吸蔵合金を使っています。水素吸蔵合金は,そのままだと危険な水素を安全に貯蔵したり移動できる合金として最近脚光を浴びています。放電時は水素吸蔵合金の水素と電解液中の水酸イオンが反応して電気を生成し,充電時は電解液中の水が分解されて負極に水素が戻って元通りになります。エネルギー密度が高い点と公害物質を用いていない点が優れています。価格もそれほど高くないので,携帯機器に多く用いられています。
最近のノートPCなどでは,さらに高性能なリチウムイオン電池が採用されています。リチウムイオン電池は,正極にコバルト酸リチウム,負極に炭素を用います。放電時は,負極に貯えられたリチウムイオンが正極に移動して電気が生成されます。充電時は,負極に電子が与えられて,正極にあるリチウムイオンが負極に戻って元通りになります。エネルギー密度が,ニッケル水素と比較して1.3倍以上であること,電池1本(セル)の電圧が高いので本数を減らして軽量化できるのが優れた点です。ただし,コストはニッカド電池やニッケル水素電池に比べて高くつきます。
(伊勢雅英)