Ultra SCSIとFast SCSIの混在は大丈夫か

Ultra SCSIカードにUltra SCSI対応機器とFast SCSI機器をつなげると,Fast SCSI機器のスペックにUltra SCSI機器のパフォーマンスが足を引っ張られるというのは本当ですか?


まず一つ明確にしておかなければならないことは,SCSI機器(正確にはターゲットデバイス)同士が相互に影響を及ぼし合うことはないということです。
 あるタイムスライスにおいてSCSIバスの状況を調べると,必ずイニシエータ(普通はSCSIコントローラ)とターゲットという2台のデバイスしかSCSIバスを占有していないことが分かります。イニシエータは,各ターゲットの許容範囲内でそれぞれと個々にやり取りを開始するので(もちろん同時に1組だけです),速いターゲットなら速いタイミングで,遅いターゲットなら遅いタイミングでデータの転送を行います。このことからいえることは,あるターゲットのスペックによる影響を受けて,別のターゲットデバイスのパフォーマンスが足を引っ張られるということは理論的にはあり得ません。
 しかし,実際には少しだけ転送速度が落ちることがあります。これは,ターゲットごとにデータを転送するタイミングが異なるとはいっても,データの走る道(SCSIバス)は1本しかないからです。Ultra SCSIの高速デバイスによる転送の前にFast SCSIの遅いデバイスの転送があると,Ultraのデバイスが待たされることになり,見かけ上,Ultra SCSI機器の転送速度が落ちる結果となります。
 ただし,現実的には速いデバイスと遅いデバイスを交互に読み書きし合うことは少ないと思います。例えば,高速なHDDを読み書きするときに,CD-ROMドライブも同時に別のデータを読んでいる場合です。
 ですから,遅い機器が速い機器の足を引っ張る確率は非常に小さいと考えられます。どうしても気になる場合には,速いデバイス用のSCSIカードと遅いデバイス用のSCSIカードを別々に用意して接続することによって,交互のアクセスによる影響を最小限に抑えることができます。ただし,これでも体感できるほどの違いは現れないはずです。
(伊勢雅英)


SCSIカード2枚差しの図