メモリ高騰の理由

最近,メモリの値段が高騰していますが,この理由を教えてください。



7月ごろから始まったメモリ価格の高騰(主にSDRAM)の原因はまずメモリチップの大手である米Micronで生産トラブルが発生したというニュースが流れたからです。これが事実であればMicronのシェアが大きいだけに世界的に供給量が足りなくなるのではと懸念され,事実が確認される前に価格が上がり始めました。この件に関して結局Micronはニュースを否定しましたし,実際に出荷量が大きく減ったという事実もなかったようです。数年前にDRAM製造に欠かせない封印剤の工場で火災があったときにも,メモリの価格があっという間に高騰することがありましたが,しばらくして下がりましたから今回も同様ではないかと予測されました。
 しかしその後もメモリは高騰を続けました。これにはそもそも利益なき価格競争が続いていたという事実も影響していたでしょう。秋葉原は一般の人がメモリを買う場所としてはおそらく世界一価格競争が激しいところですが,ここ数年はメモリ専門店のようなショップも登場して激しい価格競争が続いていました。とくに主流であるPC/100対応のSDRAMに関しては,いったいどうやって利益が上がっているのか分からない価格まで下がっていたのです。ある程度の値上がりは製造元,流通,販売店が正常な利益を得られる価格に戻っただけ,ともいえます。
 またメモリは単体で小売りされるよりも大手PCベンダーなどの消費量のほうが圧倒的に多く,メモリ高騰のニュースに反応した大手PCベンダーがメモリを大量に買い付けたため,小売りに回されるメモリの量が減り,これが店頭価格の高騰につながったという話もあります。メモリを単体販売するショップならば,メモリは品切れでもその分の売り上げが減るだけで済みますが,PCの完成品を販売しているベンダーではメモリがなければPCそのものが出荷できなくなりますから,確保に必死になるのは当然でしょう。
 また駄目押しとなったのは先日の台湾の地震です。SDRAMチップの製造に関していえば多くが韓国,日本,米国で製造されており,台湾地震の影響はそれほど大きくないはずです。ところが台湾でメモリモジュールへの加工の多くを行っていたため,影響がまったくないということはなかったようです。しかし幸いにも台湾で工場が集中する地域(新竹地区)の被害もさほど大きくなく,どちらかといえば輸送路の遮断の問題になりました。10月中旬の段階で工場の稼働率は80〜90%かそれ以上にまで復旧しているといわれており,最終的に大きな影響はなかったようです。実際10月中旬をピークにメモリ価格は徐々に下がリ始めました。インテルのIntel 820チップセットのトラブルからDirect RDRAMの製造ラインを再びSDRAMの製造に再転換するメーカーも出ており,ある程度まではメモリの価格は下がるでしょう。ただし,SDRAM PC/100対応のメモリが128MBで7000〜8000円という水準まで戻ることは当面ないという説が有力になっています。
(坪山博貴)


SDRAM(PC/100対応 128MB)のここ3か月の価格推移