Slot1は今後のCPUのトレンド(低電圧,高速,大パワー)を考えたとき,ソケットタイプに比べて不利という話がありますが,実際のところはどうなのでしょう。
スロットタイプのCPUは,CPUの交換を容易にし,SMP構成が基板上に実現しやすく,放熱面積が大きく取れるなど多くのメリットをもたらしました。しかし,2000年には達成されるであろう1GHzで動くCPU(あるいは同等の速度を持つCPU)になると,現在のスロットタイプは不利ではないかと思います。
Slot1やSlot2はカードエッジコネクタ(ISAスロットやPCIスロット)に類似した機構を使っています。このタイプのコネクタは,以前から機械的には弱いとされてきました。構造上,振動などにより脱落しやすいことに加えて,スロットにホコリや油膜が張ると接触不良を起こしやすいためです。
また,接点部分の抵抗成分も1GHz時代には問題になってくるでしょう。カードエッジコネクタは一般に接点部分の抵抗成分が大きくなりがちです。1GHzで動くCPUは当然,0.1μmクラスのプロセスで製造され,非常に低いコア電圧で動くはずです。しかし,消費電力は大きくなりますから,結果的に大きな電流が流れ,接点部分の抵抗成分の影響が大きくなります(E=I×Rの公式を思い出してください)。
接触抵抗を軽減するためには,カードエッジ部分の金属を肉厚にして,コネクタの金属板のバネの力を強める必要がありますが,そうなるとCPUの取り付け,取り外しに支障をきたし,スロットタイプの意味が失われてしまいます。
というわけで,筆者の個人的な予想ではありますが,次世代のSlotM(Marcedのソケットになるといわれている)では構造的ななんらかの工夫が盛り込まれるかもしれません。工業用のVMEバスで実績を上げたスロットに類似したタイプや,あるいはカードエッジを改善したスロットが考えられそうです。
(米田 聡)
カードエッジコネクタはバネの力で止まっている