最近,LANの速度が異様に遅いような気がします。LANの速度低下の原因を教えてください。
LANの動作速度が遅くなる原因としては,いくつかの可能性があります。
@単純に転送するデータ量が増加したため,体感速度が低下したケース
A接続しているPCの数が増えた場合,もしくは@とAが複合したケース
いずれの場合も,ネットワークを流れるデータ(トラフィック)の増加が,そのままLANの速度低下の原因です。ただし,PC数の増加やデータの増大によるトラフィックの増加以上に,ネットワークの速度が低下する場合があります。
PCでLANを組むとき,ほとんどの場合はイーサネットを利用するでしょう。アダプタやケーブルが安価で接続が容易なうえ,普及率が高くて汎用性の高さが人気の理由です。イーサネットはゼロックスらが開発したネットワークシステムで,典型的なベースバンド,バス型/スター型ネットワークです。ベースバンドは伝送する信号(符号化された物理的な電気信号を表し,「データ」とは別概念と考えてください)の周波数を変えずにそのまま送る方式で,回路は単純で済みますが,同時に1個の信号しか流せません。ちなみに,IEEE-802.3 10Base-TやIEEE-802.3u 100Base-TXのBaseがベースバンド方式を表しています。
バス型ネットワークはすべての端末を1本のバスに接続し,端末から端末に伝送される信号はバスに流されます(図1)。受信側は,それが自分宛のもの(全員宛も含む)だったときに受け取り,それ以外のときは無視します。
スター型はバス型のバスの代わりにハブが入ったものと考えていいでしょう(図2)。配線の手間が少ない以外,基本的な特性はバス型と同じです。バス型/スター型以外には,トークンリングに代表されるリング型(図3)などがあります。
バス型/スター型は,新しい端末を追加するときにもネットワークがダウンしない,接続されている端末に異常が発生してもネットワークが機能するなどの特性があり,手軽に使える点がメリットです。しかし,複数の端末が同時に信号を送り出そうとしたときに衝突が発生するというデメリットもあります。
これを避けるため,イーサネットではCSMA/CDを採用しています。CSMA/CDは,端的にいえば「衝突したときは,送信した信号を破棄してランダムな時間待つ」という衝突回避方式です。これが曲者で,ネットワークの稼働率が10%未満の場合にはデータサイズと転送時間が比例しますが,トラフィックが増加すると衝突時の待ち時間が急激に増加して,最終的には実効転送速度が0になってしまいます。
さすがにそこまではいかないにしても,端末数が少ない場合には理論上の上限速度に近い速度が出ることもありますが,端末数が増えるとトータルの信号流通量が上限速度の20%程度になることもあります。こうなってしまうと,個々の端末から見たネットワークの体感速度は「異常に遅い」と感じられるはずです。
これを避ける方法は大きく分けて二つあります。一つめはネットワークの速度を上げて,流通するトータルの信号量のキャパシティに対する比率を下げることです。現在10Base-Tのネットワークを使っているのでしたら,100Base-Tにするだけで飛躍的に速度が向上します。ただし,接続している端末とケーブル,ハブなどをすべて100Base-TXに対応したものにしなければなりません。
二つめは,ハブに接続している端末数を減らすことです。トータルのデータ流通量が変わらなくても,端末数が減れば実効速度が上がります。といっても,単純に端末を間引くわけにはいかないことがほとんどでしょう。そこで,ネットワークを複数の小さなネットワークに分離して,それらを結合することが有効になります(図4)。
分割される個々の小ネットワークは,今までのLANと同様の作り方をします。つまり,ハブに端末をつなげるだけです。異なっているのは,端末の一つとして小ネットワーク間をつなぐ装置を入れる点です。この装置にはいくつかの種類があり,どのレベルの処理までを行うかによってブリッジ,ルーター,ゲートウェイなどに分けられます。しかし,入手のしやすさや価格などの点から,最も現実的な接続装置はスイッチングハブです。最近では2万円を切る価格で8ポートのスイッチングハブを購入できるようになっています。
もし,すべてのハブをスイッチングハブにすれば,接続している装置数による速度低下がなくなります。ただし,この場合も,端末の接続の仕方によって速度が変わってきます。頻繁にデータをやり取りする端末同士を同じハブに接続するようにしないと,ハブ間のトラフィックが増加してしまい,全体の通信速度が低下する可能性があります。
また,ファイルサーバーなどのアクセスの多い端末は,メインのスイッチングハブに直接接続すべきでしょう。
(小西晃治)
図1 バス型
図2 スター型
図3 リング型
図4 小規模ネットワーク同士をつなぐ
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