CPUのクロック倍率について
ASUSTeKのSP97-XVにSL27K(MMX Pentium/166MHz)を載せています。クロック倍率を3倍にしても133MHz,3.5倍でも166MHzと認識されてしまいます。HDBENCHで測っても133MHzと166MHzの値にしかなりません。
最近になってまたMMX PentiumのSL27H,SL27Kに関する質問をよく見かけます。勘違いしている方もおられると思うので,ここではっきりさせておいたほうがいいでしょう。「CPUが規定クロック以外で動作しないのは,まったく正常である!!」ということです。もし規定クロック以上で動作するものがあったとすれば,それは「当たり」でありラッキーだったのです。ですから,上記のような質問の場合,「規定の動作クロックでお使いください」としか答えられません。ただし,それだけではあまりに素っ気ないので,もう少しCPUのクロック倍率についてご説明しましょう。
CPUの動作速度がベースクロック×クロック倍率で決定されることはご存じだと思います。ですが,クロック倍率というのはあくまでCPU内部でのお話です。マザーボードのジャンパスイッチを設定すると,MMX Pentiumの場合は,BF0とBF1というピンの電圧がプルアップ/プルダウンされるようになっています。CPUは,リセット時にこのピンの電圧状態を見て,自分が何倍速で動くのかを決定します。MMX Pentium/166MHzの場合,66MHz×2.5=166MHzですから,2.5倍速にまで対応していればいいのです。それ以上に設定できないとしても,それは正常動作ということになります。MMX Pentiumのデータシートを見ると「BF0:BF1」の組み合わせが,「1:1」で3.5倍,「1:0」で3倍,「0:0」で2.5倍,「0:1」で2倍という表が載っています。
しかし,その表の上にはしっかりと「MMX Pentium/166MHzは,2.5倍でしか動作せず,3倍,2倍,1.5倍はサポートしない」とただし書きされています。
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BF0 |
BF1 |
3.5倍 |
1 |
1 |
3倍 |
1 |
0 |
2.5倍 |
0 |
0 |
2倍 |
0 |
1 |
昨年の夏から秋にかけて,MMX Pentium/166MHzで3倍どころか3.5倍速で動作するという噂が立ち,この動作モードを持つSL27H,SL27K,SL23Vなどが大ブームを起こし,プレミア価格で販売されるほどになりました。この情報を知って質問されたのだと思います。
ところが,10月ごろから店頭に並んだMMX Pentium/166MHzは,同じロット番号ながら2.5倍以上のクロック倍率を持たないものでした。MMX Pentiumにリミッターが付いたといわれたものです。インテルとしては,3.5倍速設定を持たせたままMMX Pentium/166MHzを販売していたのでは200MHzや233MHzが売れませんから,当然の処置ともいえるでしょう。
MMX Pentium/166MHzのSL27H,SL27Kのように,規定倍率以上で動作するCPUが発見されたのは初めてではありません。数年前,Pentium/133MHzが出回り始めたころ,ごく初期のロットにのみ3倍速設定を持ったものがありました。しかし,噂が広まるのと同時くらいに,2倍速までしか持たないものに変更されたことがあります。
以上のような経緯から,MMX Pentium/166MHzの3倍速,3.5倍速モード付きのものは現在販売されておりません。店頭で手に入れることができるのは,2.5倍速までしか持たない普通の製品です。もしが購入したのが秋以前で,CPU裏面に書いてあるリビジョンナンバーがE722****以前であれば,3倍速や3.5倍速の設定を持っている可能性があります。この条件に当てはまらないようでしたら,クロック倍率のアップはできないとあきらめてください。
ただし,どうしてもクロックアップに挑戦したいのなら,ベースクロックをアップするという方法があります。この方法はクロック倍率を上げるよりもリスクが大きくなりますが,クロックアップの効果も大きなものとなります。幸い,ご使用になっているASUSTeKのSP97V-XVには75MHzや83MHzの設定がありますから,188MHz,208MHzで動作するかもしれません。おそらく,188MHzでは問題なく動くでしょう。208MHzに関しては,使用メモリの性能や増設カードの種類,HDDの性能などによっては動作しない可能性もあります。最悪の場合には,CPUを含めた何らかのパーツが壊れるかもしれませんが,それはオバークロックにつきもののリスクですよね。すべて自己責任で行ってください。
一般的な話になりますが,CPUをオーバークロックで使用する場合,電圧設定を変えないと動作しないことがあります。規定よりも速い速度で回路内の信号をやり取りするため,消費電力も多くなります。そこで,電圧を上げて,不足している電気を補充してやるというわけです(ちょっと大ざっぱな説明ですが)。実際,MMX Pentiumの規定である2.8Vで動作しない場合には2.9Vや3.0Vに設定すると動作する可能性が高くなります。ただしSP97V-XVの場合,説明書やホームページに書いてある電圧の設定と,実際の電圧が違っているという報告もあり注意が必要です。2.9Vの設定と2.1Vの設定が同じ設定となっていて,どっちなのかがよく分からないとのことです。正しい設定に関しては,メーカーに問い合わせて確認したほうがいいでしょう。
(寺崎基生)
