気になるHigh Speed CD-RW

High Speed CD-RW10倍速という規格が出てきていますが,どうして高速化できるのでしょうか? また,今までのCD-RWと互換性があるのでしょうか?


High Speed CD-RW(以下CD-RW HS)は新しく策定された高速RW用の規格です。書き換え型光記録媒体の仕様書のオレンジブック Part3のVol.2で定義され,Ver.1では4倍から10倍速(対CD比・それぞれ600KB/sec,1500KB/sec)での記録が規定されました。
 まず,気になる互換性ですが,CD-RW HSは従来の1〜4倍速※1タイプ(同Vol.1 Ver.2)の上位互換規格であり,新仕様対応のドライブではVol.1仕様のメディアにも記録できますが,その逆の,新仕様メディアは旧式のドライブでは使えません(入れても排出されてしまいます)。
 再生に関してはCD/DVD-ROMドライブを含め,従来のCD-RWメディアが読み込める機種ならまず問題なく再生できます。そのほか新旧の相互互換性に関しては表を参照してください。
 このときややこしいのは,4倍速モードが両規格に含まれていることでしょう。ブランド品同士では価格的にも大差ないため,どうせならとHSメディアを買ってしまい,いざ開封してから使えないことに気づく,というトラブルが頻発することが予想されます。前述のとおり,HSメディアはCD-RW HSマークの付いたドライブでしか利用できませんので,購入時には注意が必要です。
 高速化については,サーボやピックアップ精度の向上により,より正確なレーザー照射が可能になったことと,記録ディスク側の品質の向上を反映したもので,純粋に従来製品のアップデート版という位置づけで捉えておけばよいでしょう。また,従来のCLV(線速度一定:内/外周で回転数が変化する)方式に加え,回転数を一定に保つCAV(角速度一定)方式での記録も規格化されたため,今後CAV対応ドライブが登場してくればパケットライトなどのランダムアクセスがより使いやすくなるはずです※2。
 これは少し余談になりますが,旧仕様ドライブを新仕様メディアに対応させることは,技術的には可能です(書き込みスピードが高速化されるわけではありません)。というのも,新仕様ディスクでも,書き込みに使用するレーザーパワーそのものは,従来メディアとさほど変わっていないからです。しかし,新たに新仕様メディア用の制御情報をファームウェアに格納する必要が出てくるため,従来仕様と新仕様の両方を書き込むだけの領域が,ドライブ搭載のファームウェアに残っているかどうかという問題が出てきます。多くのメーカーで,旧仕様ドライブを新仕様メディアに対応させていないのは,もしかしたら,上記の点からかもしれません。
 ドライブ側も従来機種と比べ,それほど価格差もなく,今から購入するのであればCD-RWHS対応製品を選ぶことをお勧めします。10倍速RWとパケットライトを組み合わせた使い心地は一度使ったら後戻りできなくなります。 (アーカイブ・菊地 潤)

※1:当初CD-RWは2倍速記録のみでしたが,音楽用レコーダーなどでの使用を考慮し,あとから1倍速が追加されました
※2:一般的なCD/DVD-ROMドライブではCAVや,ディスクをいくつかのブロックに分けて回転数を変化させつつシークスピードを確保するZoneCLVが一般的な方式です。執筆時点ではCAV対応CD-RW HSドライブは市販されていません



High Speed CD-RWのロゴマーク。このマークがないドライブには使用できない


リコーのHigh Speed CD-RWメディア



10倍速CD-RWのデビューを飾った,リコーの「MP7120A」(価格:オープンプライス 実売価格:3万5000円前後 問い合わせ先:リコー TEL00120-000475)


表 CD-RWドライブとディスクの相互対応表
 
 既存ドライブ 
High Speed CD-RWドライブ
  CD-RW記録速度
2倍速ドライブ
4倍速ドライブ
4倍速ドライブ
8倍速ドライブ
10倍速ドライブ
CAVドライブ
2倍速対応
CD-RWディスク
記録
再生
1,2,4倍速対応
CD-RWディスク
記録
再生
4〜10倍速対応High Speed
CD-RWディスク
記録
記録不可※
記録不可※
10×
4〜10×
再生

※:High Speed CD-RWディスクを既存のドライブで記録しようとした場合は記録できない。