スーパーTFT液晶って何?

最近話題になっている「スーパーTFT液晶」は,従来のTFT液晶と比べてどのような点が優れているのでしょうか?


「スーパーTFT液晶」という名称は,日立製作所の商品名です。液晶の駆動方式としてはIPS(In Plane Switching)方式と呼ばれるタイプに属しています。スーパーTFT液晶というよりはIPS液晶といったほうが誤解が少ないのかもしれません。
 従来の液晶と違う点は,液晶素子の駆動方式です。従来の液晶パネルでは,透明電極で液晶素子を挟み込み,加えられた電界の強弱で液晶素子をねじれさせます。光がこれに沿ってねじ曲げられ,偏光板から「漏れる光」「漏れない光」で明暗を表現していました(カラー表現は単純なカラーフィルタによる実現ですから,あえて説明は省きます)。
 この方式は,電極で液晶素子を挟み込むことから縦電界駆動方式といわれます。TFT液晶も,PDAなどで採用されているSTN液晶もこの方式に含まれます(図1)。
 これに対し,IPS方式では電極を横に配置し,液晶素子を横電界で駆動します。これを横電界駆動方式といいます。この方式では,明暗を光の旋行性を使って表現するのではなく,液晶素子が光の進行を「邪魔する」「邪魔しない」というふうに実現しています(図2)。
 光の旋行性を用いている場合,見る角度によってはどうしても偏光板から光が漏れてしまいます。これが従来の液晶パネルの

●視野角が狭い
●見る角度によって色が変わってくる

といった弱点の原因だったのです。
 しかし,IPS方式では原理上,これらの問題は起こり得ないので,

●視野角が広い
●見る角度によって色が変わらない

というメリットが生まれるわけです。
 さらに,「よけいな光が漏れにくい」という利点は「黒色がちゃんと黒く出る」というメリットも生み出します(従来の液晶では,黒がきちんと黒く表示されにくいのです)。これがIPS液晶(スーパーTFT液晶)のハイコントラスト性につながってきます。
 なお,富士通の高視野角ハイコントラストの液晶パネルに「MVA(Multi-domain Vertical Alignment)液晶」というものがありますが,これは垂直配向膜と負の誘電異方性を有するネガ型液晶とを組み合わせたもので,IPS方式とは別の方式です。
(トライゼット 西川善司)


図1 従来のTFT液晶パネル


図2 IPS方式TFT液晶のパネル