今までの取りこぼしなど…
ドミナント7thの代理コードとして先月IV on V(IIm on V)形 の分数コードを挙げました。それに加え、本来なら代理コード のところで紹介するべきだったのですが、取りこぼしてしまっ たドミナント代理コードとして「置換ドミナント(裏ドミナン ト)」、また1章割いて説明すべきだったかもしれない「ディ ミニッシュコード」を紹介しておきたいと思います。
ドミナント7thコードの代理コード(トライトーン代理)
まず置換ドミナントですが、たとえばキーCメジャーでのド ミナントG7の代わりにDb7が使えます。Dm7-G7-CM7のツー・ ファイブ・ワンのドミナントモーションに組み込むとおいしい のですが、まずは根拠を説明しましょう。 ドミナント7thコードの中で最も重要な音は3rd、b7thと いうトライトーンです。例えばG7のコードにおいて、ベース がルートのGを押さえれば後はFとBだけでドミナントの機能 を果たすことになります。一方、このb7thのFをコードの3rd と考えた場合、これは何のコードになるかといえば当然Dbです。 そうすると元のコードであるG7の3rdは、Dbのコードにお けるb7thです。こうして出来たドミナント7thコードが置換ド ミナント(裏ドミナント、あるいは裏コード)。つまりこれは トライトーンの音程関係がひっくり返っただけであり、元のド ミナントの機能はそのまま、という風に考えられます。置換ド ミナントの見つけ方は簡単で、元のルートから-5th(+4th)上の ルートのドミナント7thコードです。 ■置換ドミナント一覧 C7 <-> F#7(Gb7) C#7(Db7) <-> G7 D7 <-> G#7(Ab7) D#7(Eb7) <-> A7 E7 <-> A#7(Bb7) F7 <-> B7 そしてこの置換ドミナントのミソは、ツー・ファイブ・ワン の4度進行を、Dm-Db7-CM7のようなルートの半音下行に置き換 えられるというポイントです。ジャズとかボサノバとかで頻出 する半音進行はここから生まれます。 ● 半音進行と4度進行(メジャー) =非対応メニューです ◎ ソースを見る ● 半音進行と4度進行(マイナー) =非対応メニューです ◎ ソースを見る さらに、この置換ドミナントはセカンダリードミナントなど、 すべてのドミナント7thにも適応できます。「使用前」がただ のドミナント7th、「使用後」は置換ドミナントを使ったもの。 ● 使用前 =非対応メニューです ◎ ソースを見る ● 使用後 =非対応メニューです ◎ ソースを見る ドミナントを出した後でルートをひっくり返してドミナント →置換ドミナントの動きを持たせ、次のコードに半音でアプロ ーチします。このような素朴なシーケンスでも、ドミナントを 置換するだけで突如として雰囲気が変わると思います。それは ルートをひっくり返すことでメロディやコード構成のうち、た だのコードトーンだったものがb9thやb13thなどのオルタードテ ンションの音に変わってくるためです。何もしないでおくとた だのコードトーンにしかならない音でも、このように装飾的な ハーモナイズをするだけでメリハリのきいた流れを作ることが できます。 ● サンプル =非対応メニューです ◎ ソースを見る 同じようなパターンをもう1つ。これはドミナント代理の F on GからG7の代わりにDb7 on Gへ進行する流れです。もろ コナミ風といいますか、ラスト2小節の上部構造を微妙にいじ る、というのがポイントとなる進行です。3小節目をF on Gで なくFm on G(サブドミナントマイナーのドミナントベース)と したり、4小節目を単にDb on Gと簡略化(置換ドミナントの構 成音省略、または代理サブドミナントマイナーのドミナントベ ース)しても構いません。
ディミニッシュコード
ディミニッシュコードについては、コードの用例の流れで触 れたぐらいで、これまでまとまった説明をしてこなかったので すが、これも結構ややこしいといいますか、いろんな場面で便 利に使えるコードなだけに説明が面倒でもあります。 ディミニッシュコードの特徴はトライトーン+m3rd上のトラ イトーン、都合4音の組み合わせで構成されていることであり、 単独で鳴らした時の不気味なサウンドは効果音としてよく使わ れます。アルペジオにバラしたり、ストリングスやブラス系の 音でゴリッと鳴らすなどの用例は死ぬほどありますね。 ● ディミニッシュコード =非対応メニューです ◎ ソースを見る ■パッシングディミニッシュ 単独で聴くとそのような特徴あるコードであるわけですが、 コード進行の中では、2つのコード(音程はM2ndであることが 多い)の間にクッションのように置き、これらを経過的につな ぐ役割も果たします(パッシングディミニッシュ)。多くは上 行コード進行のつなぎに使われますが、下行進行でもbIIIdimは よく使われます。メジャーキーのIV-IIIm-bIIIdim-IImという流 れも以前紹介した通りですね。 ● パッシングディミニッシュ =非対応メニューです ◎ ソースを見る ■ドミナント7thコードの代理として使う ディミニッシュ単体の構成に注目してみると、これはドミナン ト7thコードにb9thのテンションがついたものとほぼ同じである ことがわかります。スケール内音ならM7thのテンションが使える ことを考えれば、まったく同じコードであるとも言えます。よっ てこれをドミナント代理として使うことができます。 ● サンプル =非対応メニューです ◎ ソースを見る 特に多い用例はドミナントV7の後に持ってきてトニックの解 決にワンクッション置くやり方です。 ● サンプル =非対応メニューです ◎ ソースを見る このサンプルではキーCメジャーのG7-Abdim-Cの流れで、G7の 9thテンションからトップノートが半音で降りてくるという動きを 意識しています。機能的にはG7(9)-G7(-9)-Cと同じであることが わかると思います。 (EOF)