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美術織物
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織物は、元来、日常生活の衣服などの用に供するために織り始められたが、文化の進展ととも
に、用よりも美の方が重んじられ、美術品としての意匠や工夫が凝らされたものも、数多く産出
されてきた。中国では、紀元前後の漢時代に、すでに錦(にしき)・綾(あや)などの織物が作
られていたし、その後も織物技術は大いに発達した。中国文化の影響を受けた日本は、当然この
中国の織物技術や製品が移入され、法隆寺や正倉院には、7〜8世紀の錦や綾、羅 (ら)など
の各種の美術織物が残っている。その伝統を受け継いだ京都の古代織物研究家龍村平蔵の織った
2本の帯地が収納された。鎌倉時代祭礼文錦(さいれいもんにしき)は、花笠を飾った祭礼の人
の群れが、秋の都大路を練るありさ まを、管楯彦がスケッチし、約120色の色糸を使って高
機(たかはた)で織り上げている。製作には1日3cm、100日余を要して、幅70cm、丈
(たけ)4.3mのこの帯を織り上げた。日暮文蒔絵錦(ひぐらしもんまきえにしき)は、日本
の江戸時代の徳川三代将軍・家光(いえみつ)が、“日を暮らしみれどもあかず”眺めたという
蒔絵の文様の故事により、その美しさを再現しようと、堂本印象が念写、龍村平 蔵が織った。
強い縒糸(よりいと)の縒(よ)り戻しを利用して、布目にふくらみを持たせてあるの が特徴。
約50色の金、銀、箔(はく)、色箔、駒縒糸(こまよりいと)、甘縒糸(あまよりいと)を使
い、木製高機で、約40日で織り上げた作品である。
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