Panasonic Pavilion
本体

材質

 ■イントロダクション
 ●本体(容器)の開発
 ●形状と大きさ
 ●材質
 ●気密構造および溶接
 ●表面仕上げ
 ●内部区画
 ●記録写真




 上述のような形状をとり、密閉構造をとったとしても、なお本体の材質が次のよう 
な特性を備えたものでなければ、十分に、タイム・カプセルとしての機能を果たすこ 
とができない。すなわち、 
(1)不砕性があり、衝撃に耐えること。言い換えると、強度が高く靱性(じんせい) 
   の大きいこと。 
(2)大気や地中の存在する腐食性物質によっても発錆(はっせい)、腐食をしない 
   こと。 
(3)温度変化に強く、高温から低温にわたって機械的、化学的性質がすぐれている 
   こと。 
(4)溶接性がよく、強加工を行っても材質変化を起こさないこと。 
などの諸条件を満足するものでなければならない。そして、できれば、わが国で開発 
されたものであってほしい。この見地から多くの検討がなされ、これらの諸要求を満 
たす合金として、NTK−22ATの組成をもつ特殊ステンレス鋼が選ばれた。この 
材料は、骨折接合、人工の心臓弁、高級時計などにも実用化されている高級ステンレ 
ス鋼材である。オーステナイト組織のみからなり、加工してα−相が析出することが 
ない。また、ニッケル22%、クロム20%を基調として、含有炭素量を極力減らし 
かつ、チタンの添加によって、長年の炭素の拡散による結晶変態を防止しようとした 
合金である。 
しかしながら、この合金は、元来、棒、板材として開発されたものであった。われわ 
れの場合、従来の用途とは異なり、内径1m、壁の厚さ35〜70mmの球体に適用 
するのである。むしろこの場合、ふたを除いてカプセル本体は一体につくり出したい。 
加工に強いとはいえ、加工は最小限にとどめたい。そこで、カプセル本体はこの組成 
のもつ特性を保持しながら、鋳造によって作りだすことに決定した。この鋳造化―― 
相当大きな中空球体の鋳造――はまったく新しい試みであり困難な課題の一つであっ 
た。しかし、この難問は関係技術陣の苦心の結果、特殊反転鋳造法が案出され、ここ 
に本体の鋳造化が成功した。鋳造したカプセル本体の化学成分(重量%)は次の表に 
示すとおりである。 
 CSiPSMnNiCrMoCuTiFe
本 体
成 分
0.020.3
|
0.8
0.01
|
0.02
0.01
|
0.02
1.5
|
1.9
22.0
|
22.5
20.0
|
20.5
2.06
|
2.24
1.1
|
1.2
0.12
|
0.64
目標値

0.03

1.5

2.0
21
|
23
19
|
21
1.75
|
2.75
1.0
|
2.5

0.30
なお本体は鋳造物なので,不測の欠陥が存在する可能性があるため,各本体について 
Ir192のγ(ガンマ)線による欠陥検査を厳密に実施し,合否の判定をして完成品 
を得た。 
 


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