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プルトニウム原子時計
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収納品中、5、000年間動き続ける唯一の機器として、このタイム・カプセルEXPO’70
計画のため、新しく研究開発されたものである。その原理は、核燃料プルトニウム239から放射
されるα粒子が、ヘリウムガムに変換することを応用したもので、このガスをリン青銅製のベロー
ズ(たくさんのひだを持った伸縮自在の金属製容器)に封じ込め、その体積の増加によるベローズ
の軸方向の伸びを利用して、リンク機構によって指針を回転させて、目盛り板上で経過年数を読み
取るものである。1目盛りの幅は、約3mm、100年間を表示する。封入したプルトニウムの量
は、239PuO2粉末で1g。5、000年間のヘリウムガス発生量は、約13.1m、ベロー
ズの伸びは2.8mmである。ところで、プルトニウムから放射される粒子は、空間を約300mm
飛んでヘリウムになる。直径70mmのベローズの中に裸のまま入れたのでは、金属の壁に突き当
たって吸収されてしまうので、これを避け、損失なく完全にガス化するようにまずプルトニウムの
粉末を6分割し、それを厚さ1μの金箔(きんぱく)10層でのり巻き状に包み、それぞれ外径7
mmの無酸素銅製の小カプセルに納めた。このように薄い金箔であれば、α粒子は吸収されること
なく突き抜け、5〜6層で完全にガス化される。あらかじめベローズには、外径8mmの無酸素銅管
を溶接しておき、この銅管内を通して小カプセル6個をベローズ内にそう入した後、内部の空気を
1気圧のヘリウムガスで置換し、特に設計した圧接工具を用いて、分子間結合による圧着溶接法に
よって、銅管の機械的封じを行い、ベローズを密封した。ベローズおよび指示装置全体は、機械的
保護のため、ステンレス鋼製容器に収納した。この原子時計収納の発案は、選定委員の一人である
名古屋大学の伏見康治によるもので、発案者を中心とするプルトニウム原子時計小委員と、タイム・
カプセル開発本部により研究が進められた。
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