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ファージとDNA
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バクテリオファージは細菌に寄生するビールスの総称で、略してファージ、細菌性ビールスとも
呼ぶ。ブドウ球菌が退行変性を示すことや、赤痢(せきり)菌が溶 菌現象を起こすことが発見
され、このような現象を起こすなんらかの物質が、バクテリオファージと名付けられた。角形な
いし球形で、しばしば尾があり、大きさは8〜70mμ。その作用は、溶菌に感受性を持つ細菌
の種類に関して特異的である。宿主すなわち寄生ファージが発見された細菌の種類は多く、現在
までにバクテリウム、バチルス、ミクロコックス、コリネバクテリウム、ビブリオ、アフティノ
ミケスの各種がある。分布は広域で、人糞(じんぷん)や下水中には大腸菌ファージ、馬、豚の
糞には赤痢菌ファージ、化膿(かのう)組織 中にはブドウ球菌ファージ、連鎖球菌ファージが
多く、そのほか土壌、腐敗植物など、いたる所に見いだされる。宿主細菌に対するファージの作
用を時間的に追うと、宿主細菌への吸着、侵入、ファージの増殖、宿主細菌の崩壊とファージの
放出という段階を繰り返す。ファージは培養が容易で、溶菌班計数法が簡単で正確であり、宿主
細菌が、単一細胞であるなどの利点があるため、ビールス学一般の重要な研究材料となっている。
研究の統一を図るために、大腸菌B体を共通宿主とするT系ファージが広く使われている。DNA
はデオキシリボ核酸の略称。核酸はリボ核酸RNAとデオキシリボ核酸のDNAの総称である。
1個のリン酸、1個のD−デオキシリボース、および1個のプリン塩基またはピリミジン塩基か
らなるヌクレオチドの多数の重合体で、プリン塩基はリボ核酸と同じくアデニンおよびグアニン
であるが、ピリミジン塩基はシトシンおよびチミンである。細胞の核の中に存在して、核タンパ
クとして染色体を形成するので、遺伝に重要な関係がある。構造については多くの研究がなされ、
生体内ではモノヌクレオチドから合成されることが明らかにされつつある。
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