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テトロドトキシン
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各種のマフグ属、特にトラフグ、マフグの卵巣から抽出されて、精製、結晶化されたふぐ毒の主
成分で、約1lの卵巣から10gの結晶が得られる。1902年、田原良純により精製毒が得ら
れ、テトロドトキシンと命名された。1913年、精製ふぐ毒が鎮痛鎮疼(ちんとう)、鎮静剤
として発見され、リウマチ神経痛などの薬として用いられている。1952年、三共(株)の河
村正明たちが大量の結晶精製法を確立。ふぐ毒の薬理学的作用 は、主として九州大学の福田得
志ら日本の薬理学者により解明され、おう吐作用、知覚・呼吸・筋まひ作用、血圧降下作用、抗
不整脈作用、胃分泌抑制作用、抗利尿作用などが認められている。近年生理学者により、結晶テ
トロドトキシンの特異な、神経インパルスの伝達阻害作用が明らかにされた。きわめて低濃度の
液で、興奮時のNa(ナトリウム)イオンの細胞内侵入を、選択的に阻害し、その際K(カリウ
ム)およびCl(塩素)イオンの浸透性には影響を及ぼさない。このような作用を示す物質は、
テトロドトキシン以外にはなく、生理学的研究に新しい有力な武器となっている。
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