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「日本の短編」
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5、000年後の未来社会に、日本文学の中から何を選んで残すか、ということは、まさに至
難の選定作業であったが、文学小委員会が決めた基本方針は、日本文学の古典、明治以後の長編
小説、短編小説、評論、翻訳文学、詩集、歌集、句集に大別して、それぞれのジャンル別に作品
を選んで残すことであった。古典は「古事記」「万葉集」から「世間胸算用(せけんむなざんよう)」
までの10編、現代長編は「渋江抽斎(しぶえちゅうさい)」「道草」「細雪」(ささめゆき)「黒い雨」
など12編が選ばれ、短編小説は森鴎外(もりおうがい)から大江健三郎に至る37人の作家の
作品が、1編ずつ選ばれた。これらの作品は、もちろん粒よりの一級品であり、未来に伝える日
本文学のエッセンスであるとともに、現代にも広く推賞すべき作品群であるので、収納を機に、
これら短編集のみを集めて出版し、それらを収納するとともに一般にも市販する方法がとられた。
本は上下2冊分。上巻は、森鴎外の「舞姫」に始まる明治文学から、高見順の「嘯呼(ああ)いや
なことだ」までの20編、下巻は、中野重治「五勺の酒」から大江健三郎の「死者の奢(おご)り」 まで
17編を収録している。
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