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生物関係
われわれは、できるかぎり生物の生命を後世まで保存したいと願い、種々検討を行っ
た。現在考えられる最善の方法は、零下20〜30℃において生命を眠らせておくこ
とであろう。しかし、タイム・カプセルEXPO’70は地下8〜15mに埋められ
5、000年という年月を自然に静置されることになっており、その温度は15℃と
推定される。(埋設地中の実測値は17.5℃であった。)したがって、カプセル自
身が長年月の間働く動力源を持たない限り、零下20〜30℃に保つことは不可能で
ある。現状において、コンパクトであって、しかも5、000年間確実に一定の冷却
効果を期待できる方策は、見いだすことができなかった。
このように、生命の保存の困難な自然放置の状態では、わずかに、長寿命の代表とし
て認められている、はすの種子、あるいは一部の微生物に期待がもてるのみである。
しかし、30年後の第1回開封の時期における実験的、学間的な試みと、現在の実物
の形体だけでも後世に伝わった時の学問的な資料としての価植を思い、あえて、穀類
や野菜の種子、日本における主要材木などの種子、また、こうじかび、納豆菌、あお
かびなどの有用菌類、ファージとその遣伝因子としてのDNAなどを収納することに
した。もちろん、これらはいずれも凍結乾燥、あるいは、いったん低温に保持して乾
燥するなどの事前処理を施した後、適当なふんい気に調整した。なお、30年後およ
び100年ごとに開封する第2号機の中には、同一種類を2本ずつ収納した菌とファ
ージ類がある。うち1本を交互に利用して純粋培養し、100年ごとの植え継ぎを企
図したためである。また、生物そのものではないが、生命活動に非常に関連をもつ酵
素の類も、日本を中心に選定され、収納された。ただし、動物の保存は、上記のよう
な条件でもきわめて困難であるので、形を残す意味で、プラスチックモールドしたこ
ん虫類にとどめることにした。したがって、動物および植物は、書物による記録に負
うことにした。
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