1900 Paris

 せっかくパリに来たんだから、何か芸術工芸品を土産にしたいとおっしゃる。
 サロンの新人画家の絵も良いですが、いっそ蚤の市へ行って、うんと古いものを探すのも一興ですがね。
 パリの城壁の外側、クリニアンクールあたりにはガラクタ屋の集落があって、ちいと危険な匂いもあるが、時に本物 のお宝にめぐり合えることもありますぞ。
 アンティークと言うのは少なくとも百年、一世紀を経た古物をさす言葉で、ガラクタのことをフランスではブロカン トと申します。
 ペルシャの焼き物や、空を飛べないカーペット、インド織りの布にめったに時間の合わぬ機械時計、レディメイドの 入れ歯にジャンバルジャンが教会から横流しした銀器に似た代物など、何でもありだが、時に掘出し物があるからたま らない。
 そうそうこのあいだ、ナポレオンの子供時代の頭蓋骨を安く手に入れたって喜んでいる御仁がいたけど、どうしちゃ ったかね。