|

|
第1回社会分科会は,1968年8月31日に開催された。重要な物品や記録は,はとん
ど博物館,図書館などの公共施設に残る可能性が強いとの意見から,
1)現物中心に選び,現代生活を目で見る総合的な解説として,絵巻物を制作する。
2)記録類は「毎日年鑑」で代表させる。
という案が検討された。
以下は,この分科会の審議状況の要約である。
「選挙投票用紙」
選挙という制度や,政府もおそらくなくなるだろうということでこれを選んだ。歴史
的な記録は図書館には残るだろうから,投票用紙そのものを残したい。そして,印刷
した用紙に実例的に名前を書き込んであるものがよいと思うのだが……。
「現代日本の貨幣一式」
株券も,資本主義制度のあるうちだろうから残しておきたい。クレジットカードなん
かもいい。
「辞書」
辞書も辞典も図書館に残るだろう。むしろ古語と現代語の字引がいる。それを今後
100年単位ぐらいで次々作っていかなければ5,000年後にはことばがわからなくなるか
もしれない。何でもいいから1か国語がその時理解されていれば,すべての国語がわ
かるので,「英独」でも「英和」でも,そういう宇引があればよいと思う。今の学生
の使っているようなものは案外図書館に残らないだろうから,最高レベルの辞書では
なくて,安くて薄いコンサイスのようなものがよい。どういうふうに学生が勉強して
いたかもよくわかるし,たくさん使われていて妥当だろう。
「時刻表」
時刻表は,駅の名前がわかるし,どこそここまでの間を,飛行機で行けば何時間,汽
車なら何時間ということもわかるので必要だ。飛行機の離陸数なども伝えられる。乗
り物の写真もその間へちょいちょいはさんでおいては……。ついでに,駅弁の写真も
どうか。
「お守り、お札」
宗教の要素が入るが,神社のお守りやお札は後世に残らないだろうし,スペースも取
らないから,ぜひ入れたい。「カプセルをつくった人間はこんなものを信じていたの
か」と思われるのも愉快だ。お守り一式,お札,おみくじ,のたぐいからおもしろい
ものを選んで入れよう。交通安全や入学試験の合格願いは,現代を反映していて特に
貴重だと思う。
「服飾品」
服飾は,整理して絵にかき,下着やマニキュアを示す方がよい。着せ替え人形を作っ
たら,女性の衣類でもいっさい表せると思う。絵巻物と人形と両方にすればなおよ
い。くつ下なども,切れ端よりは一足入れたい。人形は,八頭身はやめて平均的日本
人の体格で作りたい。装飾品も加えよう。一般の庶民の程度を示すため,上等なもの
でなく,ごく普通の模造品がよいだろう。
「食生活」
現代人の食事などというのは絵巻物によってわかる。トースターや電気炊飯器などの
道具も絵をかいておけばよい。さらに,婦人雑誌を入れておけば,そのような関係物
はすべてわかる。それもあまり上品すぎず大衆的な雑誌で,写真を主にしたものにし
たい。ぜひ,週刊誌,婦人雑誌を入れておくことにしよう。
「ハンドバッグ」
現代は動物製品を使っている時代ともいえるが,皮製品は将来なくなるだろう。残す
なら草履,ハンドバッグなどかよい。ハンドバッグの中には,女性のもの全部が含め
られる。バッグに財布を入れ,その中にお金も入れておけばよい。名刺やコンパクト,
つまようじなどもそこに入れられる。普通の女性が持ち歩くハンドバッグに入ってい
るものにしたい。たとえは,ボールペン,小さい手帳やバスの回数券,自動車運転免
許証もどうか。
|