1900 Paris

 前世紀末からこの1900年にかけて、大人から子供までが夢中になったものと言えば、まずサーカスで しょうかね。
 1875年に結成された“ヌーヴォー・シルク”には人気道化師のフーティーとショコラがいる。
イタリア風の道化師プルチネッラやアレッキーノなどの古典的道化と違って、でっかい赤鼻に大きなく ちびる、だぶだぶズボンに田舎パンみたいな大きな靴のピエロだね。
 サーカスって言葉も、古代ローマの長円型の競技場から来たってことで、もとは軍隊風の曲馬パレー ドに、大道芸的なアクロバットから始まったもんです。
 力自慢の親父が、地面に横になって、足で子供を空中に放り投げては受け止める単純なものでしたが、 やがてどんどん高等になる。
 そして19世紀末には動物使いも登場して、本格的になって来たわけでね。
 特にアメリカから渡来したバーナムのサーカスには、象やライオンなどが登場して、パリ雀を夢中に させた。
 1867年だったかに日本人、鳥潟小三吉がナポレオン・サーカスで綱渡りや梯子乗りで喝采を浴びたそ うで・・・。やっこさん、元は忍者かなんかだったんですかね。
 常設館として作られた「冬のサーカス」がタンプル通りにありまして、その隣の“オウ・クラウン・ バー”に行くと、いきなりピエロがコーヒーを飲みに来たりしますよ。