このソウル大会を騒然とさせたのは、ベン・ジョンソン
の話題です。カナダの代表として100mスプリントに驚異 
的な世界記録で優勝、その記録はあのカール・ルイスを 
も上回るものでした。しかし、彼はステロイド薬物検査 
でクロの判定を受け、直ちにメダルも記録も世界選手権 
優勝者の名誉も全て剥奪されてしまいました。さらにこ 
の出場停止処分が解けた後も、また同じ過ちを繰り返し、 
全ての運動競技から永久に追放されてしまったのです。 
トルコのウエイトリフティングの選手、ナイム・ス 
レイマンオオルはフェザー級(60kg)で190kgのジ 
ャークに成功、自分の体重の3倍の重量挙げに成功 
した最初の選手です。そしてこの彼の成績は、 
1956年に無差別級の優勝者で、体重137kgのポール 
・アンダーソンの記録を上回ったことになります。 

漕艇競技のフライング・ダッチメンに出場していた、イスラエルの 
ヨエル・セラとエルダド・アミルのふたりに初のメダルのチャンスが訪れていました。 
その時点で、彼らは6種目のうち、5種目で10位以内の成績を挙げていたので、 
表彰台は確実と思われていました。しかしながら、その種目の開催日が 
ユダヤの聖なる贖いの日、ヨムキップールだったので、イスラエルの委員会から 
出場を取りやめるようにと告げられてしまいます。皮肉な事に、キャプテンであるセラは、 
不可知論者だったそうです。