ウィラード・ヴァン・オーマン・クワイン博士
博士は当初論理学者として、ウィーン学団の論理実証主義の影響下にあって哲
学を始めたが、そのテーゼに疑いをもつようになり、それまでの伝統的な見解に
対し強烈な異議を提起した。それは論理実証主義の二分法を鋭く否定し、経験論
を批判するとともに、知識は常に言明の集合体として感覚判定を受けるのだとす
る「クワイン=デュエム・テーゼ」を展開した。また「翻訳の不確定性」と呼ば
れるテーゼを提唱し、人間の経験に即したコミュニケーションの重要性を説き、
さらに『自然化された認識論』を著作し「認識論とは何か」という哲学の根幹に
係わる問題に大論争を巻き起こした。
このように、博士は哲学の最も根本的なところにラジカルな問題提起をして
おり、これを抜きにしては現代の哲学状況を理解し得ない程、強い影響を与えて
いる。