マリオ・レナト・カペッキ博士
生命の研究には、遺伝子の機能に欠損のある変異体を入手して、その振舞を調
べる手法が極めて有効である。博士は、脊椎動物の目標とする遺伝子に任意の変
異を持たせた個体を作り出し、個体の発生や、遺伝病、癌、免疫反応等による病
気の研究、さらには家畜の品種改良等にも無限の可能性を拓いた。この方法はジ
ーンターゲティング法(標的組み換え法)と呼ばれ、今日広く生物学の世界で用
いられている。この方法を用いて、特定の遺伝子の機能を欠いたいわゆるノック
アウトマウスを作り出すことにより、高等生物における遺伝子の働きの解明が大
いに進んだ。
今日の生命の研究の多くは、博士の仕事に負っているといっても過言ではな
く、生物学、医学、農学等に計り知れない恩恵を与えている。