モロボシおじさん | あれ、これは商店街のオモチャ屋じゃないか。やっぱりオモチャ屋で買えるんじゃないの。 |
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ホシノ少年 | フフフ。お父さん、ボクはちょっと用事があるので失礼しますが、あとのご案内はこのバルタン博士がお引き受けします。 |
バルタン博士 | フォフォフォ。よろしく。 |
アンヌちゃん | それじゃね。私たちはいそがしいからここで失礼するわ。バルタン博士、うまくやるのよ。 |
バルタン博士 | フォフォフォ。 |
モロボシおじさん | いったい何処にあの怪獣たちは売ってるのかなぁ。 |
バルタン博士 | フォフォフォ。あの怪獣たちはお店のなかで売られているのではない。お店の外で売られているのだ。 |
モロボシおじさん | えっ、店の外? |
バルタン博士 | フォフォフォ、そのとおり。これを見るがいい。 |
モロボシおじさん | これって、ガチャガチャじゃない。 え〜、今は200円もするんだ。ボクが子供の頃は10円だったのに。 |
バルタン博士 | フォフォフォ。試しにそのウルトラマンの機械にお金を入れて回してみなさい。 |
バルタン博士 | フォフォフォ、それは塩化ビニール製のフィギュアだ。 この機械はベンダー機といって、メーカーが自動販売機と製品を専門の問屋に売って、全国の問屋がオモチャ屋の店先やスーパーマーケットの店内に場所を借りて置いておくというものなのだ。問屋は置いてある場所を定期的に回って商品を補充する。売上金の一部をお店に払うわけだ。 |
モロボシおじさん | へぇ、あんた見かけはバルタン星人だけど、よく知ってるねぇ。ボクたちの頃は小さなピストルや車が欲しくて小遣いを注ぎ込んだものだけど、そんな仕組みになってたんだ。 もう一個やってみよっと。 |
モロボシおじさん | こんなにきれいに色が塗ってあって、こんなに精密に出来てて200円ってのは結構お買い得だよね。でもこの機械は自分がすきなアイテムを選んで買うことが出来ないんだよね。 |
バルタン博士 | フォフォフォ、そのとおり。それが低価格の秘密でもある。 大量に作ってこの方法で販売すれば、特定のアイテムだけが売れ残ってしまう可能性はないから、その分だけコストが下がるというわけだ。 |
モロボシおじさん | なるほどねぇ。 じゃついでにもう一個。 |
バルタン博士 | フォフォフォ、昔の10円機から始まってここ10年は100円機が主流だった。製造コストも上がったので、手の掛かる彩色済みの商品などは国内では作れなかった。 それに、100円ショップの流行で中国製の安い大きなオモチャが出回りはじめたので、一時は売上げが伸び悩んだこともあったのだ。 |
モロボシおじさん | へぇ、それにしても詳しいですね。あなたひょっとしてメーカーの人? |
バルタン博士 | フォフォフォ、黙って聞きなさい。 それでは私も一個出してみよう。 |
モロボシおじさん | あっ、欲っしいな〜、それ。 |
バルタン博士 | フォフォフォ、自分で出しなさい。 最近になって中国での生産技術も向上して中国生産が本格化したのだ。それでコストが下がって、質のいい彩色も可能になった。現地の工場では彩色職人が何本もの面相筆を指に挟んで一個一個仕上げているのだ。4年前から200円機の本格フィギュアが出現したというわけだ。 |
モロボシおじさん | そんなこと今の日本でやったらいくらかかるかわかりませんねぇ。 それじゃもう一個。 |
バルタン博士 | フォフォフォ、今では原型は日本で作られるが、金型(かねがた)も中国で作る場合もある。ベンダー機全体の市場は150億円近くある。これは年間1億個以上のカプセルトーイが売れているということなのだ。 |
モロボシおじさん | それにしてもよく出来てますねぇ。 |
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