《桂と月》

古来、中国では、月には桂の樹が生えているとされました。
京都の東南に位置するここ、桂の地もまた月とのゆかりは深く、月中の桂樹の種が落ちて林になったと伝えられます。かつては月神ツクヨミノミコトを祭る月読社があり、古くから観月の名所として、また川遊びや狩猟の適地として貴人たちを集めました。
なかでも平安時代に、時の最大権力者・藤原道長の営んだ桂別業(別荘)は風雅をきわめ、そこでの華麗な宴は『源氏物語』松風の巻で、光源氏が催す月見の宴のモデルとなります。

桂離宮はそれから500年後、これらの記憶を受け継いで作られました。