ンドに発した原将棋は、海洋ルートでインドシナ半島に上陸。さらに海洋ルートに乗って日本にたどり着いた……というのが日本将棋の伝来ルートとして、今有力な説になっています。

タイには今も「マック・ルック」という、チェス式の立体駒を使う将棋がありますが、これを現地で指してみたプロ棋士の大内延介九段は、世界のどの将棋よりも日本将棋に近い感触を得たといいます。駒の性能が全体に弱いこと、歩兵を一列あけた位置に並べることなどから、ゲーム性が近いのです。

日本将棋は、駒を裏返して別の性格に変える「成り駒」の制度や、とった駒を自陣の兵力として使うことができる「駒の再使用ルール」に特色があります。このため思考プロセスも複雑なものになり、江戸時代から幕府お抱えのプロ棋士制度ができ上がるほど、高度なゲームになりました。

このような日本将棋の特質は、駒の形が変形の五角形で、敵、味方に同じ文字でが書かれていても、盤上で自陣駒がハッキリ判別できるデザインであることで成立しています。この形になったのはいつなのか。近年よく発掘される出土駒がその謎を解いてくれるかもしれません。いまのところいちばん古い駒は、1992年、興福寺境内から出土した11世紀のもの。すでに現行の将棋に近い5角形になっています。

チェス史にくらべ、遅れをとっていた東洋の将棋史研究ですが、日本にも増川宏一氏、大内延介氏などのワールドワイドな視野をもつ研究者が登場。東洋圏を中心に充実した研究を行って、欧米の遊戯史研究と比肩するレベルに達しました。いま、日本のこの分野の研究は、言葉の壁から東洋圏に踏み込めなかった欧米の研究者から熱い期待が寄せられています。

     マック・ルック(タイ)
   ◆盤8×8路 
   ◆駒数 32 
   ◆駒の名称 
     クン=君、コーン=根、マー=馬、
     ビア=貝殻、ルア=船、メット=種 
   (6種類)

     将棋(日本)
   ◆盤9×9路 
   ◆駒数 40 
   ◆駒の名称 
     王将、金将、銀将、桂馬、香車、
     歩兵、飛車、角行 (8種類)