1903年12月17日午前10時35分。たった5人の村人の見守るなかで、自転車屋兄弟の弟オーヴィルの乗った<フライヤー1号>は、ふわりと空中に浮き、12秒間飛行して着陸した。飛行距離は、36.6mであった。ここに人類の長い夢が実現したのじゃ。実に美しい安定した飛行であった。


彼らライト兄弟は、準備周到じゃった。鳥の滑空の原理を取り入れたリリエンタールのグライダーを研究し、ラングリーの指導と励ましを受け、自ら<たわみ翼>と呼ばれる飛行の姿勢を調節できる仕掛けや、4気筒12馬力、81kgの軽いエンジンを工夫して、自然の原理と人工のシステムを融合させたのじゃ。

この成功の日の4回目の飛行は、兄のウィルバーが操縦して滞空時間59秒、距離 259.7mであった。もうこれは完全な飛行であった。