わたしと同時代のアウストラロピテクス・アファレンシスには、じつはもう一種類、大きなタイプのがいるの。どれくらい大きいかというと、わたしが身長1m、体重27kgぐらいだけど、そいつは身長1.5m、体重58kgと、ぐんと大きいの。おもしろいことに、そいつは肘の関節はしっかりしているんだけど、膝の関節が頼りなくて、わたしたち小型の種類とは逆なのね。だから大部分の学者さんは、大型種をナックル・ウォーキングをしていた「古類人猿の祖先だ」とみているようね。
でもね、わたしの発見者のカリフォルニア大学のドナルド・ジョハンスンは、この大型・小型を同じ種の性的二型、つまりオス・メス関係だという説なの。たしかにゴリラのように、オス・メスの大きさが極端に違う種類もあるからねえ……。そうすると、大型種はわたしのライバルではなくて、わたしの夫だということになるわけ。このへん、学者さんたちの争点だから、今のところ大きな謎なのよ。

ちなみに、わたしたちより後代(200万年前)のアウストラロピテクスのP型(頑丈型)とA型(きゃしゃ型)の想像図をお見せしておくわ。同じアウストラロピテクスだけど、これが、わたしたちの時代の大型・小型のそれぞれの子孫なのかどうかも、よくわからないの。こんな謎だらけの人類史が、いくらかハッキリするのは、ホモ・ハビリスの時代から。人類の祖先をたどっていくと、間違いなく行き着く最初のヒトが彼等なのよ。