![]() 関野たちがパヤの撮影隊と連絡がとれなけれぱ、ベース・キャンプで待つサポ ート隊たちは判断不能のまま孤立することになります。パヤはパナマの最奥地に 位置しており、外部と即座の連絡は不可能で、無線や電話を利用するためには 50km以上も下流にある町まで行かなければなりません。そのため、通信衛星イン マルサットを経由して世界中に通話が可能な「衛星電話」を、パヤのベース・キ ャンプに設置することにしました。そうすれば、常時東京と直接交信することが 可能で、撮影隊が情報のないまま不安なときを過ごす必要がなくなります。 GPSは行動者自身が現在位置を測定できる画期的な装置で、今では「カーナ ピ」として普及していますが、GPSで位置確認ができたとしても、当人からの報 告がなけれぱ外部ではその位置を把握することはできません。そのため、トラン シーバーが交信不能になった場合を想定し、縦走隊に「衛星追跡システム」を装 備することにしました。よく新聞紙上などで、渡り鳥や野生動物の行動調査に衛 星迫跡システムが使われていることが報じられていますが、現在では渡り鳥の足 首にでも装着が可能な超小型の発信装置がすでに実用化されているのです。衛星 迫跡システムを縦走隊が装備していれば、万が一の場合でも行方不明地点を特定 でき、捜索や救出のときに迅速に行動することができます。 いろいろ調べた結果、フランスのアルゴス社の衛星迫跡システムはすでに商業 ベースで運営を開始しており、地球のどこにいても居ながらにして位置通報のサ ーピスを受けられるということでした。この「アルゴス・システム」の発信機の 電波には識別コードがあり、発信機からのデータを受信した航法衛星は、その信 号を地上局に送信し、1次処理された信号はフランスのトゥールーズにある情報 処理センターのデータベースに収納されます。こうした私たちの計画に理解を示 してくれた富士通株式会社から、この機器を提供したいという申し出があり、日 本よりも比較的レンタルの容易なロサンゼルスでアルゴス・システムの発信装置 「アルゴスTAT3」を借り受けることができました。このアルゴスと、日本でレン タルした可搬型インマルサットM型通信設備とあわせて、撮影隊(ベース・キャ ンプ)との即時通話と縦走隊の位置確認が可能となり、懸念していた非常時の対 応という問題が解決したのでした。 第3期の終着点であるコロンピアのトウルボを出発点として、関野は3月24日か ら第4期の行動を開始しました。アルゴスの送信周波数は16チャンネルあるの で、「0一順調、4一遅れる、8一引き返す、12一救援乞う」と設定しました。こ の発信機は非常の場合にはSOS信号も発信できるので、そうした意味でも安心で した。関野本隊が発信している信号は、ロサンゼルス経由で富士通の友野氏が独 自にインターネットでアルゴス社のデータを入手して応援団事務所にFAXで送っ てくれることになり、データが入手できるごとに縦走隊の位置を連絡してくれま した。カヤックでトウルポからウラバ湾を渡り、アトラト川を遡っている関野た ちの行動状況は、東京で把握できていたのです。 縦走隊はトランシーバーを携帯し、パヤのベース・キャンプと連絡がとれるよ うになっていました。また、アルゴス・システムは発信機が故障しない限り、も っとも頼り甲斐のあるものでした。 |
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