関野吉晴からの報告
ペルーアンデス

南北8,000キロ、世界最長の山脈の中央に位置するこの地に、独創的な文化を誇ったインカ帝国が栄えた。インカ文明は一朝一夕に出来たのではなかった。 インカの世界観も社会も、さまざまな技術も、アンデスの世界での数千年にわたる人々の努力が実を結んだものである。

インカ時代の支配者達は、インデイオの労働に対して十分な代償を支払った。 しかしインカ帝国を征服したスペイン人は略奪の限りを尽くし、貴重な文化遺産をことごとく破壊した。 インデイオはスペイン人の経営する鉱山や農園で過酷な労働を強いられた。

  ペルーアンデスはセルバ(熱帯雨林)、シェラ(高地)、コスタ(海岸砂漠)から成っている。 インデイオ達の中にはそれらの土地を有効に利用し、インカの伝統を守り、誇りを持って暮らしている人達も多い。

  6月上旬、300もの楽団が標高4,600メートルの高地に集まって来ている。その楽団が一斉に演奏を始めると、谷全体を揺らしているようだ。4人ないし10人で構成される楽団は太鼓、ケーナー、トランペットを始めとした吹奏楽器、チャランゴ、バイオリンやアルパなどの弦楽器を各グループがばらばらに演奏する。 調子っぱずれの演奏も多い。それでいて、妙に調和していて、広い谷を会場とした大オーケストラとなる。

 5万人もの巡礼者達が、礼拝堂の周りに野宿をする。石で囲いを作り、ビニールシートを被せるだけ。 その下で毛布かポンチョにくるまって寝る。大きな鍋を持ってきて、自炊する者が多い。朝になると礼拝堂の周りはもうもうと煙がたつ。しかし最近ではテントを張った簡易食堂も多く、そこで食べる者もいる。 3年間続けて参加すると幸運がまわってくると言われている。

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