ナバホ・ネイション
ナパホ族は現在人口20万人、米国最大の先住民だ。米国の先住民というと、失業、
アルコール中毒、荒涼とした居留地、白人による虐殺と略奪の歴史など悲惨なイメージがつきまとう。西部劇では常に悪者扱いであった。しかし、かつては「ソルジャーブルー」、そして最近では「ダンス・ウイズ・ウルブズ」といったアメリカ先住民の視点
から見た、あるいは彼らの文化を見直す映画が作られてはいる。しかしよそ者に
たいする排他的な態度は変わらないと聞いていた。
彼らの中に入っていけるのか?不安な気持ちでナパボ居留地に入っていった。自転車でナパホ・リザベイションに入り、ナバホ・コミュニティ・カレッヂの寮に泊めてもらうことになった。ここでいくつかの授業を聞かせてもらった。ナバホの哲学、ナバホ語のクラス、ナバホ伝統の履物モシカン作りを教えるクラスなど。教師も学生もナバホの
伝統文化をなんとか残し、自分たちのアイデンティティを確認しようとしていた。
キャニオン・デ・シェイはスペイン人に迫われてナバホの人達が逃げたところだが、
この谷に住むナバホ族一家をたずね、三日間世話になった。この家族も子供たちは皆、町で暮らしている。残った年寄り夫婦もここと息子の家を行ったり来たりしている。
それでも農繁期になると、家族が集まる。親子三代そろってトウモロコシの栽培をしていた。種を蒔いた後、伝統の砂絵を描いて、雨を祈願した。今年は雨が少なく、最初に蒔いた種が発芽しなかったのだ。砂絵を描くとその中に神が宿り、願いを聞き届けて
くれるという。水の象徴であるアり男を描き、祈った。祈りを捧げるとすぐに壊した。
その砂は、聖なる方向である東にある木の根元に捨てられた。こうして砂絵に宿った
神は帰り、願いは届くという。
一方では伝統文化が忘れ去られようとしている。他力ではもう一度伝統文化を復活
しようという動きが活発になっていた。たとえぱ1週間に1回パウワウと呼ばれる
「戦士の祈り」が週末に開かれる。これなども踊りによって伝統的な文化を思い出すとともに、バラバラになりがちな人々の絆をとり戻そうとするための契機にしているように思えた。
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