今昔百鬼拾遺 雲之巻

(国立国会図書館所蔵)

石燕曰く 楚の国宋玉が東隣に美女あり。墻にのぼりて宋玉をうかがふ。 嫣然として一たび笑へば、陽城の人を惑せしとぞ。およそ美色の人情を とらかす事、古今にためし多し。けらけら女も朱唇をひるがへして、 多くの人をまどはせし淫婦の霊ならんか。
解説 町中や町外れを一人で歩いていると、背後から「ケラケラ」笑う声が します。驚いてふり向くと、40歳ほどの中年の大女がこちらを見て、 朱色にべったり染めた唇で笑っています。その笑いは人の不安をかきたて、 恐れさせます。怖くなって逃げだそうとすると、前回よりも大声で笑います。
石燕の説明によると淫婦の霊が倩兮女になったのでは、と書かれて いますが、実際のところはよくわかりません。