今昔百鬼拾遺 雲之巻

(国立国会図書館所蔵)

石燕曰く 漢武帝李夫人を寵愛し給ひしに、夫人みまがり給ひしかば、 思念してやまず、方士に命じて返魂香をたかしむ。 夫人のすがた髣髴として烟の中にあらはる。武帝ますますかなしみ 詩をつくり給ふ。

是耶非耶立而望之偏娜々何冉々其来遅
解説 反魂樹から作られるという霊香。死者の魂を呼び戻す呪術に使用されます。
石燕の解説の内容の故事は、能の「花筐(はながたみ)」の中の主役である 照日の前が、継体天皇のかつてのことを語りながら舞うシーンで 出てきます。照日の前は、仙女であった李夫人との別離を悲しんだ武帝が 甘泉殿の壁にその姿を写して悲観に暮れ 、反魂香を焚いて霊を呼び戻そうとした故事を語ります。