今昔百鬼拾遺 霧之巻

(国立国会図書館所蔵)

石燕曰く 「人生勤にあり。つとむる時は匱からず」といへり。生て時に益なく、 うかりうかりと間をぬすみて一生をおくるものは、死してもその霊 ひまむし夜入道となりて、灯火の油をねぶり、人の夜作をさまたぐる となん。今訛りてヘマムシとよぶは、へとひと五音相通也。
解説 生きているときに、なんら得ることなくうつらうつらと一生を 過ごした人が、死んで火間虫入道になるようです。夜に仕事をしていると 現れて、灯油をなめていくようですが、実害はないようです。 「閑」という字と関連して名前が先にあって、それに火間虫という漢字が 当てられて、灯油をなめるようになったのか、あるいは逆に、先に 灯油をなめる妖怪のイメージが確定してから名前ができたのか、 さだかではありません。