今昔百鬼拾遺 雨之巻

(国立国会図書館所蔵)

石燕曰く 遠州佐夜の中山にあり。むかし孕婦この所にて盗賊のために害せられ、 子は胎胞の内に恙なく、幸に生長してその讎を報しとやか。
解説 東海道の遠州(静岡県)の金谷峠と日坂峠の間に小夜の中山という土地が あって、ここには不思議な石があり、夜泣き石と呼ばれていました。 この石は夜になると悲しい泣き声を出すのだそうです。
昔、子供を身ごもった女が、この石の所で夜に強盗に襲われて斬り 殺されました。その後、夜毎に石からとても悲しい泣き声のような音が 聞こえるようになったということです。この石は現在でも、小夜の 中山久延寺に残されているそうです。
前述の夜泣き石の他にも、泣き石の話は各地に伝わっています。京都の 舞鶴地方の「福岩」や岩手県の「台石のくやし泣き」、岡山県の 「こそこそ岩」などが知られています。また、洪水を教えてくれた 「呼わり石」、人を助けてくれる「囀石(さえずりいし)」もあります。 あなたの近くにも話す石があるかもしれません。