今昔百鬼拾遺 雨之巻

(国立国会図書館所蔵)

石燕曰く ある人赤間が関の石硯をたくはへて文房の一友とす。ひと日平家物語を よみさして、とろとろと居ねぶるうち、案頭の硯の海の波さかだちて、 源平のたたかひ今みるごとくあらはれしとかや。もろこし徐玄之が 紫石潭も思ひあわせられ侍り。
解説 石燕の説明を意訳すると、ある人が赤間ヶ関産の石硯を買ってきて、 文房具として愛用していました。ある日、「平家物語」を読んでいるうちに うとうとしていると、硯の中に海が現れ、やがて源平の合戦もこのようで あったかという様子でした。
赤間ヶ関とは下関の近くで、平家一族が滅亡した場所なので、硯に その怨恨が現れたのでしょうか。