百鬼徒然袋 巻之中

(国立国会図書館所蔵)

石燕曰く 玄上牧馬と言へる琵琶はいにしへの名器にして、ふしぎたびたびありければ、 そのぼく馬のびはの転にして、ぼくぼくと言ふにやと、夢のうちにおもひぬ。
解説 玄上・牧馬はともに宮中の琵琶の名器の名前です。これらもいろいろ 怪異があったようで、「禁秘抄」や「徒然草」第七十段にも記されて います。「徒然草」第七十段では、玄上が行方不明であった頃、後醍醐帝の 大嘗会中の清暑堂で、菊亭大臣(藤原兼季)が牧馬を演奏した話が 記されています。
石燕が言うには、「琵琶の牧馬をひっくり返して、ぼくぼくとでも 言おうか」と名付けられたようです。