百鬼徒然袋 巻之上

(国立国会図書館所蔵)

石燕曰く それ森羅万象およそかたちをなせるものに、長たるものなきことなし。 麟は獣の長、鳳は禽の長たるよしなれば、このちりづか怪王はちりつもりて なれる山姥とうの長なるべしと、夢のうちにおもひぬ。
解説 「百鬼徒然袋(あるいは百器徒然袋)」は、題名でもわかるように 吉田兼好の「徒然草」の影響を大きく受けているように思われます。 「徒然草」の第七十二段では、「多くて見ぐるしからぬは文車の文、 塵塚の塵」と、「百鬼徒然袋」の次に記されている文車妖妃と同時に 発案したのではないかと思われる記述があります。
石燕の説明では、「世の中で形を持つ者には必ず長(王?)になる者が 存在する。・・・ちりづか怪王もちりがつもって成る山姥とかの 長(王?)だろうか、と夢の中で思った」と想像しています。画の構図は、 「百鬼夜行絵巻」(真珠庵蔵)の古い唐櫃の部分を参考にしているように 思われます。