百鬼徒然袋 巻之下

(国立国会図書館所蔵)

石燕曰く 照魔鏡と言へるは、もろもろの怪しき物の形をうつすよしなれば、 その影のうつれるにやとおもひしに、動き出るままに、此のかがみの 妖怪なりと、夢の中におもひぬ。
解説 百年を経た古鏡が妖怪に変化したものです。これも付喪神のひとつです。 あるいは旧暦8月の満月の明かりの中で、水晶の盆に水を汲んで、 鏡の面にその水で妖怪の姿を描くと、鏡の中に住み着くという話も あります。鳥山石燕の説明にある「照魔鏡」というのは、妖怪の本体を 映し出す鏡です。あるいは「破邪鏡」とも呼ばれます。
鏡は古来、魂の依(よりしろ)として、魔力を持つものとされてきました。 三種の神器や祭礼の際にも鏡は必須のものでした。また、正面からは 見えないが、光を反射させると紋様や画像が浮かび上がる、魔鏡と いうものもあります。